新連載『書籍づくりの匠』では、本作りに携わるさまざまなプロフェッショナルの方がたに、ご自身のお仕事を語っていただきます。第一回目は、ドラッカーの名著集にも関わられた、デザイナー竹内雄二さんです。

20年越しの「リベンジ」

『ドラッカー名著集』(全15巻)の装丁をやらせていただくことになった時は、さすがに緊張しました。御社(ダイヤモンド社)にとって、ドラッカーという著者がどういう存在かは重々承知していましたから。コンペで選ばれることになっていた本シリーズの装丁が僕の案に決まった瞬間、選ばれた喜びはありましたが、それ以上に緊張感が半端ではなかったです。これは大役だと。

竹内雄二氏。デスクに並べられた書籍は、すべて竹内氏の手になるもの。定番書からベストセラーまで幅広くこなす氏は、編集者からの信頼も篤い。

 こう語る竹内雄二氏は、今年20年目を迎えるブックデザインの第一人者である。名古屋の美術大学を卒業後、編集プロダクションとデザイン事務所を経て、28歳で独立した。以来、書籍に特化したデザイナーとして活躍。これまで装丁した本は1000冊を超えるという。

 実は編プロ時代に、ドラッカー関連の仕事をしたことがあるんです。もう20年以上前の話ですが、ドラッカーさんが来日したときのことです。ある企業の主催で講演会が行われることになったのですが、その講演会のパンフレットをデザインする仕事を、僕がいた編プロの社長が取ってきたのです。

 当時の僕はわずか1年のキャリアしかない、まだまだ半人前のデザイナー。ところが何を思ったか社長は、僕に「全部やれっ」と。

 それからは毎日のように、講演会を運営するダイヤモンド社の担当者から電話の催促。時間がないので、ラフを書いてはファックスで送る、という連続でした。経験もないし、時間もなかったし。それはもう、いま思い出しても恥ずかしい仕事ぶりでした。ドタバタの連続で、ドラッカーさんの経歴を「オーストラリア生まれ」なんて誤植してやり直したり(笑)。この仕事は、僕にとっての「トラウマ」になりました。

 それから20年ほど経って、奇しくもドラッカーさんの名著集の仕事が来たのですから、とても力が入りました。この仕事は僕にとって、20年前の仕事のリベンジ、という気持ちもありました。

 名著集のデザインで思い出深いのは、プレゼンを受けた際、担当編集者から「この本は僕が定年退職した後も残る本です」と言われたことです。ということは、20年以上残す本でありそれに相応しいデザインを、というリクエストです。

 そこから考えたのは、書店店頭で存在感を示すだけでなく、読者が家や会社の書斎に置いておいたときの「たたずまい」も伴ったものにしなきゃいけない、ということでした。