中小型液晶パネル市場は、
現在もっとも成長が期待される分野

 去る6月7日、東芝とソニーが中小型液晶パネル事業を統合するとマスコミ各社が報道しました。

 事業統合の対象となった中小型液晶パネルとは、スマートフォンや米アップルの「iPad」などタブレット端末の画面に使用される液晶です。指で画面に触れて操作できる特徴があり、タッチパネルのなめらかな操作感や、高画質、低消費電力などの特性が求められ、液晶テレビなどで使われる大型パネルよりも高い機能が必要な製品です。

 中小型液晶の市場規模は2010年で1兆7830億円。今年は25%の市場拡大が予想され、これから先も数年は二ケタ成長が確実視されている成長分野です。衰退分野ならまだしも、そんな成長分野なら東芝やソニーが単独でやっていってもよさそうなものですが、なぜ事業統合に踏み切るのか、そんな疑問も湧いてきます。

 今回は、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の分析ツールを使い、東芝とソニーがなぜ事業統合に踏み切るのか、その背景と今後の競争戦略を解き明かしていきます。

東芝とソニーが成長分野の液晶事業を統合――。<br />PPM理論で見ると、両社の思惑が…

 まず、中小型液晶パネルの現在の市場シェアを確認してみましょう。

 中小型液晶市場は、日本、韓国、台湾のメーカーがシェア上位を占め、シェア1位が日本のシャープ、2位が韓国のサムスン電子、3位が台湾の奇美電子となっています。東芝とソニーはそれぞれ4位と7位に位置しています。東芝とソニーのシェアを合算すると、15.3%となり、シャープの14.8%を抜いて一躍トップに躍り出ることになります。韓国メーカーや台湾メーカーに押され気味の分野が多い日本の電機メーカーにとって、数少ない技術的、シェア的に優位性のある製品分野です。