スマートフォンやタブレット端末の需要拡大に対応するため、現在シェアトップのシャープはテレビ用大型パネルを生産していた三重県の亀山工場を中小型液晶用に転換し、生産能力を上げることを決めています。また、投資力に勝り、大量生産と低価格を得意とする韓国・台湾メーカーもシェア拡大を虎視眈々と狙っています。そのような中、東芝とソニーは単独で戦っていくには、将来的にやや苦戦が予想される状況にあったので、今回の経営統合を検討するにいたったのでしょう。

 過去にさかのぼると、日本の液晶メーカーには大型液晶パネルで苦い経験があります。

 ブラウン管テレビから液晶テレビに移行する2000年代当初、日本メーカーはいち早く大型パネルを使った液晶テレビを商品化。2004年にはシャープが亀山工場を稼働して量産体制にはいるなど、2000年代半ばまでは、日本メーカーが市場のけん引役を果たしてきました。

 ところがその後は巨額の設備投資を断行するサムスン電子が台頭し、台湾企業も次々に液晶工場を建設。投資競争に敗れた日本企業はどんどんシェアを落とし、今では大型液晶パネルの上位4社を韓国・台湾のメーカーが占める状況です。その上位4社の合計シェアは85%にものぼり、日本メーカーはシャープが5位(6.5%)に入るのがやっとで、日本メーカーの合計シェアは10%を割っています。中小型パネルでこの失敗を繰り返したくないという想いが、東芝とソニーの事業統合の背中を押したのは想像に難くないところです。

PPM(プロダクト・ポートフォーリオ・マネジメント)は
投資すべき分野を明確にする

 さて、この東芝とソニーの事業統合をプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)のフレームワークで分析してみましょう。PPMはアメリカのコンサルティング会社、ボストン・コンサルティング・グループが提唱した考え方で、企業の持っている事業の最適な組み合わせを検討するのに使います。

東芝とソニーが成長分野の液晶事業を統合――。<br />PPM理論で見ると、両社の思惑が…

 PPMを図に表したものが上図です。タテ軸に「市場成長率」、ヨコ軸に「相対市場シェア」という要因を置きます。

 タテ軸「市場成長率」は、上にいくほど市場の成長率が高く、下にいくほど成長率が低くなります。

 ヨコ軸「相対市場シェア」は、左にいくほど市場シェアが高く、右にいくほどシェアが低くなります。こうして作ったフレームワークには4つの箱ができます。①から順番に意味を説明します。