上司の「信頼の差」は紙一重!
「任せ上手」と「投げるだけ」は違う

「良いリーダーシップ」を考える研修の中で、参加者に「自分がやってもらって嬉しかったリーダーシップ」のエピソードを思い出してもらうことがある。そのとき、必ず出てくるエピソードで、しかも数が多いものがある。

 それが、「任せる」というリーダーシップである。

 人は任されたとき、嬉しく感じる。そこには、上司から信頼されたという喜び、上司から期待されたという喜び、あるいはドキドキハラハラしながらも最後は成長を実感できた喜びが、記憶に強く残っているのであろう。

 一方、「自分がされて嫌だったリーダーの行動」についてエピソードを挙げてもらうと、「仕事を投げられたとき」という意見が多く出てくる。

 ポジティブ・リーダーシップの横綱が「任せる」なら、ネガティブ・リーダーシップの横綱は、「仕事を投げられる」ことと言える。しかし、この2つ、実は紙一重の違いしかない行動なのである。

 ネガティブ・リーダーだって「お前に仕事投げるからな」とは言わない。その際は必ず「これ、お前に任せたから、やっておいてな」などと、「任せる」という表現をするはずだ。

 そう、どちらも上司からすると「任せる」という行為なのである。しかし、片方は部下の高いモチベーションにつながり、片方はやる気を喪失させ、上司への信頼を損なわせる。

「投げる」ほうの上司については、その行動がその人の中で一般化すると、周囲はフリーライダーと認識するようになる。人に仕事を投げて、ふっておいて、楽をする。そして、うまくいって成果が出たら、自分の手柄にする。

 いわば、尊敬される上司とは真逆の上司像となる。「こんな上司の下では働きたくない」「やってられない」と言われる上司となる。