品格とガバナンスなき経営に、
顧客も社員も社会も失望する

 隠蔽と暴走――。

 経営トップの座にある人々が不祥事を引き起こすケースが、日本企業で相次いでいる。オリンパスの損失隠し、大王製紙の特別背任容疑。共に「名門」と呼ばれる大企業のトップによる不祥事だ。

 オリンパスの場合は、10年以上も損失が表沙汰にならないように隠蔽されてきたと報じられている。この先、その事実関係が明らかにされていくものと思われるが、なぜに10年以上にもわたって、隠蔽が気づかれることがなかったのか。

 マイケル・ウッドフォード元社長以前の取締役は、誰も疑問すら感じなかったのか。前社長は雑誌の記事を読んで問題意識を感じ、監査法人に検証を依頼した結果、損失隠しの疑惑が確信に変わったと報じられている。

 では、それまでの社内の経営者の間では、本当にそんな噂すら囁かれていなかったのだろうか。そして、誰も勇気を持って行動しようとした人はいなかったのだろうか。

 大王製紙の場合は、元会長が連結子会社から100億円超の使途不明の借入を行なったという容疑をかけられている。その大半がカジノの借金のためと言うから、驚きだ。

 庶民感覚からすると、どうやったら賭けごとで100億円を使えるのか、その使う場所も、使い方もイメージができず、不思議で仕方がないのだが、事実であるならば、明らかに異常であることは確かだ。

 その「異常なこと」を、1人の人間が実行できてしまったわけである。なぜなのだろうか。

 これらの行為は、こつこつと真面目に頑張っている社員及び、その歴史的積み上げの結果として築きあげた会社の信頼に対する、悪質な「タダ乗り行為」である。社員からすると、真面目に仕事に向き合って毎日を過ごしていたところに、降ってわいたような災害をもたらされたことになる。