いま、遺言や相続で悩まれている方が増えています。人それぞれ、いろいろな問題を抱えていますが、遺言があった場合となかった場合では、どう違うのでしょうか。ユニークな遺言の書き方を提唱する『90分で遺言書』の著者・塩原匡浩氏に、遺言のポイントを聞く。

子供はみんなかわいいが、後妻の子だけに財産を贈りたい

「遺言セミナー」受講生からの
一本の電話

 ある大手デベロッパー主催の「遺言セミナー」で講師を務めたことがあります。参加者の年齢はまちまちで、男女比はちょうど半々くらいでした。とくに、女性の参加者が活発に質問され、遺言を自分事として捉えているようでした。

 それから1ヵ月ほどたったある日、私の事務所に中年の男性から一本の電話がありました。

「先日、遺言セミナーを受講した者ですが、とても参考になりました。あれから遺言の事が頭を離れず、ぜひご相談に行きたいのです」

 私は遺言に興味をもってもらえたことを嬉しく思い、お会いする日程を決めました。

 秋晴れの日の午後、その男性はやってきました。精悍な顔立ちのビジネスマンというイメージです。セミナーのときに大きくうなずいていたのを私も覚えていました。

 まず、その男性の話をじっくりとうかがうことにしました。

「私は岡田(仮名)といいます。不動産管理業をやっていて、今年で60歳になるのですが、終活なんてまだ先のことと考えていました。でも、先日のセミナーで遺言の効用を知って、これはいまの自分に絶対に必要だと思ったのです。本を買って調べるよりも、塩原先生のお話をもう一度お聞きするのが早いと思って連絡しました」