先日、久しぶりに競馬場に行ってきた。好天にも恵まれて、生のレース観戦はすばらしかったが、馬券はさっぱり当たらなかった。

 せっかく競馬場に来たのだから、どのレースも馬券を買って「参加」したい。だが、続けて買っているとそれなりに損失が累積する。

 筆者は、日頃「ムダなリスクを取るな」「自分が有利だと思える理由がなければ、賭けをするな」と言っているのだが、競馬場に来てみると、大きく動いたり、話題になったりしている銘柄に吸い寄せられる素人投資家のように、毎回レースに参加するのだった。

 メインレースには、他のレースよりも大きな金額で馬券を買いたくなる心理も、振り返ると納得しにくいものだった。

 どの株で儲けても儲けは儲けであるのと同様に、大きく勝負するレースがメインレースである必要はさらさらない。自分が勝ちやすいと思う「狙い」のあるレースに相対的に多く賭けるのが正しいギャンブラーだ。そうでない場合にはリスクテークを控える自己管理能力が投資家にも必要だ。

 最終レースを迎えた時点で、筆者は損を積み重ねていた。ここでの典型的なギャンブラー心理は、「1日の収支をプラスにして帰ることができるかもしれない馬券」を買うことだ。かつて、ファイナンス学者のウィリアム・ジエンバが、競馬を研究して、最終レースのオッズと回収率に関して、高倍率の馬券に需要が増えてオッズが下がる一方、相対的に低倍率の馬券の回収率が向上する傾向があると報告した(詳しくは、リチャード・セイラー『セイラー教授の行動経済学入門』篠原勝訳、ダイヤモンド社刊を参照されたい)。