酔ったお客様が怖い
タクシードライバーNさん(38歳)

職場の人間関係に疲れ
独りでできる仕事を選ぶ

 Nさんが、ソフト会社のエンジニアを辞めてタクシードライバーになったのは数年前。ソフト会社時代の上司は、責任感は強いが口下手で要領の悪いNさんを、ストレス発散の標的にしていた。

「辛気くさい顔して仕事をされると職場が暗くなる」「仕事も終わっていないのに昼飯だけはしっかり1時間もとるのか」「優先順位をわかっていない」「俺が部長から怒られた責任をどうとるんだ」「後輩のお手本になっていない」

 入社してから長年続いている上司の嫌味と小言にNさんが慣れ始めた頃、オフィスが郊外に移転することが決まった。違う場所に行ったからといって上司との関係が良くなるはずもない。むしろ狭い社会では、嫌味がエスカレートすると感じたNさんは思い切って転職を決意した。

 システムエンジニアの仕事そのものは嫌いではなかったが、職場での人間関係の煩わしさから早く解放されたかった。

 ドライブが好きだったNさんは迷わずタクシードライバーの道を選んだ。

 Nさんは会社を辞めてから、二種免許を取るために教習所に通い運転を改めて学んだ。快適で安全なブレーキング。正確なハンドリングや無駄のないコース取り。教官に教えてもらうことは新鮮だった。Nさんがいかに我流で運転をしていたか気づかせてもらった。