物流業界全体を見据える大塚倉庫の「働き方改革」は、どこがユニークなのか物流業界全体を見据えた効率アップ、長時間労働削減に取り組む大塚倉庫の「働き方改革」は、どこがユニークなのか

働き方改革への関心が高まりつつある今、残業削減に躍起になる企業がある一方で、そのしわ寄せを受けた下請け企業が疲弊するといったケースも耳にする。そういった中、業界全体を見据えた効率アップ、長時間労働削減に取り組んで「ロジスティクス大賞」も受賞しているのが、大塚グループの物流会社・大塚倉庫株式会社である。同社代表取締役会長の大塚太郎氏とは旧知の仲である小室淑恵・ワーク・ライフバランス社長が、そのユニークなアイデアが生み出された源泉を解き明かす。(まとめ/アスラン編集スタジオ 渡辺稔大、撮影/内藤洋司)

業界全体で残業削減に
取り組む「大塚流改革」

小室 働き方改革と言うと、自社の従業員の労働時間削減を最重視する経営者がほとんどですが、私が一番驚いたのは、“自社の従業員ではない”トラックドライバーの残業時間削減に注目し、システム投資までして、本当に半減させたことです。太郎さん(大塚太郎氏)は、この物流業界全体の深刻な人手不足について、以前から危機感を持っていらしたんですか。

大塚 物流業界の仕組みは、メーカーの工場で生産した商品を預かり、各地の倉庫に運んでストック、それを各地の運送会社さんが倉庫から積み込んでスーパーなどに納品、そこで売られて消費者に届く、というフローで成り立っています。

 つまり、全部バトンタッチ・リレーをしているようなものですが、全工程を通して見ている人はいないんです。各工程では、「後ろの人からバトンをもらって、それを前の人に渡していく」ことでいったん仕事は終わります。だから自分の工程だけ改善するのは意外に簡単です。前後の人に頼むか、お金を払うかして仕事を振り分けてしまえばいいわけですから。

 でも、じゃあ大塚倉庫が運送会社さんに対して一方的に「これから働き方改革をするから、協力してよ」と言ったらどうなるか。

小室 当然、運送会社さんにシワ寄せが行きますよね。「自分さえ良ければ」という働き方改革になってしまう。業者間の取引においてパワーの強い企業では、自分の庭だけ綺麗にする働き方改革をしがちです。