「速く読めて覚えられる」――速読の技術を活かして、本から得られる知識の最大化と、その活用方法をビジネスパーソン用に体系化したのが、『速読日本一が教える すごい読書術 短時間で記憶に残る最強メソッド』です。読書が習慣になっている人には重宝される技術でも、そもそも、何の本を読めばいいのかわからないという方もいるでしょう。そこで今回は、あるテーマに絞ったおすすめ本(課題図書)を紹介します。興味を持った本がありましたら、ぜひ、「すごい読書術」の技術を使って、自分のモノにしてください。

はじめて学ぶ分野の本を少しでも速く読める方法

 速読を教えていると、「はじめて学ぶ分野の本を少しでも速く読めるようになりたい」といったお悩み相談を受けることがあります。

 当然ながら、速く読む以前に、自分が知らない言葉だらけの文章はそもそも普通に読むことができません。

 私が速読に関心を持ったキッカケは、今までまったく興味がなかったお金に関する勉強をするためでしたので、同じ悩みをかつての私自身も持っていました。

 速読を学びはじめて、少しずつできるようになっていくものの、自分のレベルを超えている本を速読しようとすると読むスピードが落ちることで私も悩んでいたのです。

 昔はわからない言葉があったら本で調べるしか手段はありませんでしたが、今はインターネットで調べることができるので、デモ口座などを活用しながら、先に経験を積んでしまうことが容易になりました。こうして、実資金を減らさないようにしながら、トライアンドエラーを繰り返し、その経験から得られた学びを体系化するために本を活用するのが、現代の本の活かし方だと私は考えています。

 同時に、本を読むことには、著者が経験した失敗を知ることができるメリットがあります。試行錯誤するなかで、同じ過ちを繰り返さないようにすることで、時間を最大限に有効に使う意味もあります。闇雲に経験ばかり積み上げるのではなく、最低限の知識が身についたら、「本×経験×環境」それぞれの要素をバランスよく高めていくようにしましょう。

 新しい分野を学ぶにしても、背景知識が何もなく、何から手をつけていいかわからない方も多くいるでしょう。とはいえ、「お金」が嫌いな人はいないでしょうから、今回、このテーマで選書してみました。「お金」については勉強しても足りないくらいなので、ぜひ、『すごい読書術』を活用して読んでみてください。「今の私が過去の私におすすめするとしたら?」という視点で、4冊の本を紹介したいと思います。

1.『誰も教えてくれないお金の話』
うだひろえ著、泉正人監修、
サンクチュアリ出版

 マイホームや結婚、子育て、老後とライフプラン毎のテーマで基礎的なお金の知識を学べる1冊です。漫画で書かれているので基本的には読みやすいのですが、文字が多めになっています。活字嫌いの人によっては拒絶感が出るかもしれないので、そのように感じた場合は、イラストから得られるイメージを優先に、気になると思った箇所の説明文は読んでいく、といった読み方をしていくといいでしょう。

 本書で書かれている、住宅ローンの間違った組み方の典型例が、完璧なまでに私自身の過去の経験と重なっていて、「ローンを組む前に読んでおけば、ここまでの失敗経験にはならなかっただろう…」と思わされた1冊でした。

2.『家族のお金が貯まるのは、どっち!?』
菅井敏之著、アスコム

 40万部を突破したベストセラー『お金が貯まるのは、どっち!?』の続編の本です。たまたま著者の方とお会いする機会があり、「アタック読書術」を実践したことがありました。そのときに「本当は続編のほうを多くの人に読んでもらいたいんだ…」と話されていたので、その日に買って読みました。たしかに前作のベストセラー本はいい本ですが、個人的には続編のほうが必読だと私も感じました。

 自分だけでなく、親や子どもも含めて、家族全体を1チームとして考えて資産形成を考えるという視点で、様々なお金のテーマに対して元銀行支店長の目線で書き綴られています。専門家がお金について語っている本は多く見かけますが、この本に魅力を感じたのは、親目線、子ども目線それぞれの心情を察しながら、お金にあまり詳しくない人でも読みやすく書かれている点です。「親の資産や負債がいくらあるのか?」、「子どもに金銭感覚を持たせるにはどうすればいいのか?」など、お金を増やすというよりは、「ほどほどの生活でいいから家族平和に暮らせるように」という思いを叶えるために、「お金を守る」部分にフォーカスしています。

 家族のイメージが頭に描かれている状態で読むと、自分事として想像しながら読めるので、「バーチャル読書術」を実践するにはうってつけの本です。特に親の立場にある人は必読です。

3.『改訂版 金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』ロバート キヨサキ著、白根美保子訳、筑摩書房

 お金の勉強をしていた当時、ネットで節約術や貯金について片っ端から調べて実践して、支出削減を頑張っていました。しかし限界まで突き詰めてくると、節約して貯金するレベルには限界があり、「支出が減らせないなら収入を増やすしかない」と感じはじめていたのです。

 そんなとき、たまたま行きつけの美容師さんに紹介されたのがこの本でした。この本を紹介されたときはまだ速読を習う前だったので、本を見た瞬間に読む気が失せました。そのため文字は読まずに、図版イラストが入っているページだけ読んで、後日美容師さんと本の話になっても、何となく話を合わせられるくらいにはしておこうと、今考えればセコい対策を打ちました。

 ただ当時の私にとっては、キャッシュフロー・クワドラントの図解やお金の流れの図解、あとはそれらの図解が載っているページ付近で興味あるトピック部分の文章を読むだけでも、とても大きな価値がありました。わずかな知識ですが、そのイメージが投資本やビジネス書などの本を読むときの背景知識的な位置付けになり、本を読んでいるときのイメージが広がりやすくなったと考えています。

 この本は、普段本を読まない人にとっては、正直なところ「読みづらい…」と感じると思います。もしそのように感じた場合は、図版を頼りに、気になる小見出し部分の文章だけ「1秒リーディング」、「1秒リマインディング」を繰り返すだけでも、最初は十分です。

4.『世界第3位のヘッジファンドマネージャーに日本の庶民でもできるお金の増やし方を訊いてみた。』
塚口直史著、朝日新聞出版

 資産運用に関する本は数多く出ています。しかしそれらの本は、運用を専門としていない立場の方(ファイナンシャルプランナー、元銀行員、経済評論家など)が著者となっているケースがほとんどです。そんななか、この本の著者は運用を専門とする現役のヘッジファンドマネージャーです。著者は他にも出版をしていて、基本的には金融知識がある人にとっては興味深く読めて、金融知識が乏しい人にとっては難しいと感じるものが多いのですが、この本は一般の人が理解しやすい文章で書かれています。

 具体的に「何を、いくら買っておけばいいか」ポートフォリオが明示されていて、その金額も一般人目線の金銭感覚で始められるものになっているので、「アクション読書術」が実践しやすい本です。もちろん私自身も実践させていただいております。

 本を読んでいくと、VIX(恐怖指数)を取り込んで、好況でも不況でも収益がプラスになるように考える点など、他の資産運用系の本ではあまり見かけないところも多くなっています。正論を知るだけならば、他の資産運用系の本を読むのでも構わないのですが、弱肉強食の市場で勝ち続けているプロ中のプロの目線で、実践的な考え方を体感できる意味で是非読んでおくといい一冊です。

 皆さんにとって、気づきのある本はありましたでしょうか?「お金は大事なもの」とは誰しもが思うところですが、お金の勉強をきちんとしている人は少数なのが実態です。生きていくためには切っても切れない関係にあるツールとしてとらえると、むしろ必須で学んでおかなければならない分野の一つと考えられます。ぜひ読書を通じて、お金に困らない人生を歩む力を身につけてください。