池谷裕二氏
脳研究の最前線を走り続ける脳研究者・池谷裕二氏。就活生とその保護者へのアドバイスとして、脳の特性から考える仕事選びの方法を聞いた。『息子・娘を入れたい会社2026』本誌には掲載しきれなかったエピソードを含めたロングインタビューを3回にわけてお届けする。(取材・文/奥田由意、撮影/平野晋子)
長く楽しく続けられる仕事を
どう探していけばいいのか
――脳の特性から考えると、就活生が仕事を楽しく長く続けていくためには、どのような考え方が重要でしょうか。
人によって何を楽しいと思うかは違うため、一概には言えませんが、最も重要なのは脳の可塑性(物が力を加えて変形した際に、その形が元に戻らずに維持される性質)という特性を理解することです。
脳には経験を積むことで価値観そのものが変化するという性質があります。今価値があると思っていることに、5年後の自分はほとんど価値を感じなくなるかもしれない。これは決して悪いことではなく、むしろ自分が成長し視野が広がった証拠です。
ですから、現在の価値観に縛られすぎないこと、そして、今の評価に「保留をつける」姿勢を身につけることがきわめて重要だと思います。今の楽しさにのめり込みつつも、「今、これが楽しいけれど、10年後は別のことを楽しいと思っているかもしれない」という変化の可能性を受け入れる余地を持つ。
長期的な視点で自分を俯瞰して、「メタ(高次)な視点」で自分にとっての楽しさを考えてみるのです。
――就活では、なんとしても第一希望の会社に入りたいと焦ったり、そこに落ちたら即、第二希望に切り替えて、準備に追われるたりするなど、目の前のことにとらわれがちです。
身もふたもないことを言えば、今の時代、最後まで同じ会社に勤め続ける人はそうそう多くはありません。
それならば、あまり「今、ここ」だけにとらわれず、価値観が変化することを前提に、将来もっと輝いている自分、新しい価値観を見つけて成長している自分を想像しながら、仕事選びを考えるほうがはるかに建設的です。







