トップの仕事ほど細心の注意をもって<br />整理しなければならないダイヤモンド社刊
1890円(税込)

「ボトルネックはボトルのトップにある、という。いかなる組織といえども、トップを超えて優れたものとはなりえない。トップを超えて大きな構想をもつことも、卓越した仕事ぶりを示すこともできない。先代のトップの構想と遺産によって、しばらく生き続けることはできる。しかしそれでは、後払いで生きているにすぎず、支払いの期日は思っているよりも早く来る」(ドラッカー名著集(2)『現代の経営』[上])

 トップの仕事ぶりが組織の仕事ぶりを規定するというのであれば、なにがなんでもトップには頑張ってもらわなければならない。トップとして行なうべきことに集中し、トップとして卓越した仕事をしてもらう必要がある。

 ところが、トップが行なうべき仕事が何であり、それらのものをどのように組み立てるかが、ほとんど知られていない。

 ドラッカーは、そのためほとんどのトップが、必要に迫られて日常の仕事に追いまくられるだけの存在になっているという。あるいは、自分が専門としてきたなじみの仕事に首を突っ込み、後輩たちに迷惑がられるだけの存在になっているという。

 どのトップも、困ったという顔はしていない。だが大企業、中小企業、あるいは公的機関のいずれを問わず、あまりに多くのトップが混乱し、時間を浪費している。

 すべてがトップ次第とあれば、トップが行なうべき仕事の分析と、現在トップが使っている時間の分析の2つが不可欠となる。

 ドラッカーが紹介するストップウオッチを使ったある調査によれば、自分が行なうべきであると思う仕事に集中していられる時間が、1日に20分以上あるというトップが稀だったという。

 トップの仕事は、徹底的に検討して初めて混乱を免れることができる。トップたるものは、自らの仕事に優先順位をつけなければならない。重要でないことに時間と労力を小出しに使い、重要なことをおろそかにするようなことは避けなければならない。

「トップの1日も、ほかの人と同じように24時間しかない。彼らもまた、はるかに責任の軽い人たちと同じように、眠ったり、休んだり、くつろいだりする必要がある」(『現代の経営』[上])

週刊ダイヤモンド