「なぜ、あの人はすぐに正解を導けるのか?」「なぜ、あの人は失敗をしないのか?」「なぜ、あの人はやりたいことを実現しているのか?」――とびぬけて頭のいい人は、「迷いのない判断基準」と「瞬時に対応する問題解決能力」を持っています。その2つの能力を普通の人でも使えるスキルとしてまとめた、新刊MENSA、ISI、HELLIQに所属する天才のパターン思考 2時間で知能が高まる「思考の技術」から、天才の思考法を紹介していきます。

自分を取り巻く大きな「流れ」を把握し利用する

 誰もが一度は「将来は○○になりたい」という夢や理想を抱いたことがあるはずです。

 では、みなさんは、その夢や理想を実現できたでしょうか。今、やりたかったことをやれているでしょうか。実際は、ほとんどの人はやれていないのかもしれません。けれども、今自分の生活の中心になっている仕事や趣味などは、たとえ最初に抱いた夢や理想とは違っていても、大きな「流れ」に身を置いてきた結果、必然性があってそこにたどり着いたものなのです。

 当たり前のことですが、私たちは一人きりで存在しているわけではありません。社会の中で、他人とともに生きています。自分の周囲の環境や条件によって形成されるのが「流れ」です。そこには、大きな流れも小さな流れもあり、自分の周りを取り巻いています。

流れを読む

 私の場合を振り返ってみましょう。

 医師になろうと思ったきっかけは、自分が小児喘息だったことでした。これは自分で決めることのできない要因でしたが、考えてみると、喘息の発作で苦しんでいたときから、実は流れができ始めていたのだと思います。

 親族に医師がいるわけでも、有名進学校に在籍しているわけでもなかったので、当初は自分の心の中だけの小さな流れでした。しかし、大学に合格し田舎を離れたあたりから、その流れは大きなものに変わり、まるで流れの中に自分が存在するかのような感覚になったのです。

 その後は、これを利用しない手はないと思い、流れを把握しながら進んできました。その結果、高校生の頃には想像できなかった素晴らしい機会の数々に恵まれ、夢だった海外留学を実現させるところまでたどり着きました。

 自分を取り巻く流れを無視して、最初に抱いた理想やイメージにいつまでも固執してしまうと、うまくいかない場合があります。本来やりたかったこととは一見違っていても、流れを利用して進んでいくうちに、意外と楽しくなってきます。最終的には、自分がもともとはどうしたかったかが関係なくなることすらあります。

 川下りをイメージしてください。川下りでは、上流から下流へと、川の流れに任せて移動します。特別なことをしなくても、進んでいけるのです。しかし、もしこれが、川上りだったらどうでしょうか。流れに逆らうことになるので、余計なエネルギーが必要ですし、移動に時間がかかってしまいます。

 米国のシューベルトと言われた作曲家アーヴィング・バーリンは、「人生とは、10パーセントは自分で作るもので、90パーセントはそれをどう引き受けるかだ」と述べました。私は、偶然のように思える出会いや出来事でも、自分が引き受けさえすれば必然的なものになると考えています。流れを利用するには、まずは今ある流れを引き受けることです。

 環境を思い通りに変えることはできませんが、流れを生み出すことはできます。「こうなりたい」「こうしたい」と、自分が本気で望み、行動しさえすれば、何もなかったところに小さな流れができるのです。

 もしかしたら、進んだ先で川が2つに分かれているかもしれません。そんなときは、自分自身がどんな人間か、どうするのが幸せかを考えて、どちらに行くかを決めてください。自分の本質に立ち返れば、正解を選択できるはずです。

 挑戦することを諦めず目標に向かっていくうちに、やがて流れは強大になり、自分に必要な機会や出会いを引き寄せながら、自分を遠くまで運んでくれるようになります。

 まだ見ぬ明日への推進力となるのです。

まとめ

凡人→流れを意識しない
天才→流れを引き受けて利用する
メリット→必要な機会や出会いに恵まれるようになる