「なぜ、あの人はすぐに正解を導けるのか?」「なぜ、あの人は失敗をしないのか?」「なぜ、あの人はやりたいことを実現しているのか?」――とびぬけて頭のいい人は、「迷いのない判断基準」と「瞬時に対応する問題解決能力」を持っています。その2つの能力を普通の人でも使えるスキルとしてまとめた、新刊『MENSA、ISI、HELLIQに所属する天才のパターン思考 2時間で知能が高まる「思考の技術」』から、天才の思考法を紹介していきます。
「相対評価」>「絶対評価」
物事を評価する基準には、「相対評価」と「絶対評価」の2種類があります。
何かと比較したときにそのもの自体がどの位置にあるのかを評価するのが相対評価、ある特定の基準に達しているかどうかを評価するのが絶対評価です。
例を挙げると、大学受験など定員が決まっていて、「試験の成績がいい人から順に100人合格」ならば相対評価、資格試験などで「得点率70%以上で合格」ならば絶対評価です。
私は、基本的にすべての物事を相対評価で考えるようにしています。
たとえば、おいしいと評判の店に行ったけれど、行ってみたらたいしておいしくなかったという経験はみなさんにもあるのではないでしょうか。
「おいしい」の基準は人それぞれです。そこで「おいしい」「おいしくない」という2択で論議してもあまり意味はありません。ほかのどういう店と比べておいしくないのか、値段の割にどうか、などについて考えないと評価できないのです。そういう意味で、「味覚」は相対評価です。
「人」に対しても、同じことがいえます。
私は、これまでに何度か、知人から「すごい人がいるからぜひ会ってみてほしい」と、人を紹介されたことがあります。自分に刺激を与えてくれるようなすごい人なのかと思い期待して会ってみると、実は単にお金を持っている人だったということがわかり、がっかりしたものです。
このように「すごい」という価値観も、人によってまったく違います。惑わされないためには、「誰と比べてどこがどうすごいのか」を評価することが必要です。
しかしながら世間では、根拠のあまりはっきりしない通説や、いわゆる一般常識をもとに、何も考えずに評価してしまう場面がよく見られます。
たとえば、若者と老人では、世間的には「年をとっているほうが正しい、物事を知っている」と思われがちですが、実際にはそうとは限りません。
若者でも知識が豊富な人はいますし、老人でも間違った行動をしてしまうことはあります。よく「若者はマナーが悪い」という言葉を聞きますが、注意して見ていると、老人でもマナーの悪い人はいます。これは、何も考えずに「年が上の人のほうが正しい」というような通説を鵜呑みにして、年齢という「数」にミスリードされてしまっている例といえるのではないでしょうか。
本来、数は物事の「本質」ではありません。陸上競技のタイムや記録のように、数自体が意味を持つ場合を除いて、数の大小では何も決まらないのです。年齢ではなく、「どんな人なのか」を考えることが重要です。
相対評価で本質を探る
相対評価で考えることは、ビジネスの現場でも大いに役立ちます。
社内で「優秀」といわれている人と仕事をするときは、自分の知っている人の誰より優秀なのか、誰と比べて優秀ではないのか、考えてみるようにします。そうすると、必要以上に萎縮することがなくなり、相手主導になるのを避けることができます。
「実績がある」という人に対しても、その実績がかけた年数にふさわしいのか、同年代のほかの人に比べてどうなのか、自分ならその人よりも上に行けるのか、などを考えて判断すると、その人の「本質」が見えてきます。
また、相対評価を逆に利用することもできます。社内や集団の中で認められたいと思ったら、ほかの人よりほんのわずかでもいい結果を出せばいいのです。そうすれば、周囲の人は、あなたのことを「その集団の中でいちばんできる人」と認識してくれるからです。
このように相対評価で考える姿勢でいると、周囲に惑わされることがなくなり、間違った選択をすることも減っていきます。それは、ひいては成果に結びつきます。
「本質」「真実」に近づくためには、物事を相対評価で判断する癖をつけるべきです。
まとめ
凡人→ほかと比較せずに判断してしまう
天才→比較対象を必ず用意する
メリット→根拠のない情報に流されず「本質」を把握できる