デジタル全盛期にあっても、近年、手書きの効果が注目されている。その中でも世界中でブームになっているのが、バレットジャーナルという箇条書きを活かしたノート術。手書きは面倒だと感じる人も多いが、一方で、その面倒な作業をわざわざ行うことで、思考整理に役立つという効果も確実にあるようだ。アナログのノートを使うことで、自分にとって大切なことが見えてくるのはなぜか? 本連載では、発案者であるライダー・キャロル氏が書き下ろした初の公式ガイド『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』の刊行を記念して、著名なバレットジャーナル・ユーザーや専門家たちに寄稿してもらう。今回は、人気のウェブマガジン「毎日、文房具。」の編集長である髙橋拓也氏が、バレットジャーナルの魅力とその効力について語る。

最強ノート術バレットジャーナルは<br />自分らしく生きるためのツール
最強ノート術バレットジャーナルは<br />自分らしく生きるためのツール髙橋拓也(たかはし・たくや)
文房具の魅力を紹介するウェブマガジン「毎日、文房具。」の代表 兼 編集長
文房具が大好きで、ウェブマガジンを通じて文房具の素晴らしさを日本中、世界中に発信することをライフワークにしている。最近では文房具売り場のプロデュースや文房具メーカーと共同で販売促進企画を行うなど活躍の幅を広げている。

 2017年後半あたりから日本で「バレットジャーナル」という言葉が流行りはじめたように記憶している。誰でもできるタスク管理方法、もしくは自作の手帳術として、日本でもいくつか書籍やムックが発売されたり、雑誌で特集が組まれたりした。

 2019年4月、ライダー・キャロル氏の著書『The Bullet Journal Method』の翻訳書として、ダイヤモンド社から『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』が発売される。『The Bullet Journal Method』は世界29か国で刊行される、いわばバレットジャーナル発案者による公式本である。

 幸運なことに「バレットジャーナル」についての記事を寄稿するにあたり、一般発売前に本書に目を通すことが許された。

 文房具の魅力を発信するウェブマガジン『毎日、文房具。』の編集長として、また様々な手帳やノートを使ってきた一人の手帳ファンとして、私なりのバレットジャーナルについての考え方や使い方について書きたいと思う。

バレットジャーナルとは?
箇条書きを活用したシンプルな手帳術

 まずバレットジャーナルについて、簡単に私なりの理解を述べておこう。正式なバレットジャーナルの概念や具体的な使い方については公式ガイドである『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』に任せるとして、私自身はバレットジャーナルを「ノート1冊とペンがあれば、いつでもどこでも誰でも始められる、箇条書きを活用したシンプルな手帳術」だと考えている。

 バレットジャーナルのシンプルなルールに則ってメモを取りながら過ごすことで、タスクのやり忘れが減り、またアレコレと散らかった考えを整理することができるということで、世界でブームになっている。

 自分自身で自分に合うように手帳(あるいはタスクリスト)のフォーマットを作りながら書き進めていくものなので、特定の手帳やノートに縛られる必要はない。言い換えると、手帳の枠や罫線に自分を合わせるのではなく、自分に合うように手帳を作るイメージだ。

ノートと一緒と暮らすことで、自分の人生を取り戻す
――私とノートとバレットジャーナル

 実は私はバレットジャーナルと出会う前から1冊の小さなノートを毎日持ち歩き、日々のタスクや記録を残す生活をしている。

 ノートには、「毎日のタスクを書き出すページ」を中心に、起こった出来事や備忘録を書いたり、観た映画のチケットの半券や新聞記事を貼り付けたりもしている。

最強ノート術バレットジャーナルは<br />自分らしく生きるためのツール

 もともと好奇心が強く、「自分が楽しいと思うことは全力でなんでもやりたい!」という性格に少しの経済力が付くと、いろいろと人生をこじらせることになり、たくさんの役割を背負うことになった。

 夫、サラリーマン、子、これらの役割は一般的だが、これにウェブマガジンの代表&編集長、オリジナルステーショナリーのプランナー、ラジオ出演者、ビジネススクールの学生、バレーボールサークルの主宰者、台湾美食倶楽部と称した食事会の主宰者、マラソンランナー、マーケッター、投資家など様々な顔が加わる。

 当然、1日24時間では足らなくなり、「やらなければいけないこと」に忙殺された結果、「やりたいこと」が何一つできなくなり、どの役割も楽しめなくなった自分がいた。

「これではいけない!」とそれぞれの役割で抱えるタスクをすべてノートに書き出し、優先順位を付け(もしくはやらないという判断をし)、毎日ノートと向き合うことで少しずつ生活は改善された。

 ノートと一緒の生活が始まってからは、自分の人生を取り戻したような感覚になった。今は本当にやりたいことに自分の貴重な時間とエネルギーを注ぐことで、充実した生活を送っている。

『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』を読み進めるうちに、あのころ悩んでいた自分を強く思い出すことになった。バレットジャーナルはまさに頭の中のモヤモヤやゴチャゴチャを書き出して整理し、大事なことに集中し、そして自分らしく生きるためのツールだ。

 また、タスクを処理するだけのツールではなくて、自分への理解を深めることにも役に立つツールなのである。あの時ジタバタしていた自分に本書を読ませたい。