サウジ皇太子「砂漠の夢」人工月が輝く未来都市 米コンサルティング会社が策定した計画の中身はサウジがハイテク都市「ネオム」の建設予定地としている海岸には廃船が放置されている
Photo:Rory Jones/THE WALL STREET JOURNAL

 【シャルマ(サウジアラビア)】サウジアラビア北西部の紅海沿岸に位置するシャルマ。この不毛の地にコンサルタントのグループが見いだせる唯一の天然資源は、太陽光と「無制限に取れる塩水」くらいのものだ。

 だがサウジの実権を握るムハンマド・ビン・サルマン皇太子(通称MBS)は5000億ドル(約54兆円)を投じ、ここに未来都市「ネオム(Neom)」を建設する計画を進める。無人の空飛ぶタクシーで仕事に向かい、自宅ではロボットが家事をこなすような未来だ。技術力ではシリコンバレー、娯楽産業ではハリウッド、保養地では南仏コートダジュールに取って代わることを目指している。

 こうした具体的な構想がウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の確認したボストン・コンサルティング・グループ、マッキンゼー・アンド・カンパニー、オリバー・ワイマンによる2300ページの機密文書、およびプロジェクトの関係者らとのインタビューで明らかになった。2018年9月の日付があるこの文書は、計画が2017年に公表されて以来、最も詳細なネオムの将来の姿を描き出している。

 皇太子から想像上の未来都市を現実のものにする仕事を託された米コンサルティング大手は、SF世界のアイデアや経済界のバズワード(流行語)をちりばめた壮大な構想を策定した。だが気まずい現実が行く手を阻んでいる。まず、地元の部族を2万人以上、強制的に移住させなくてはならない。また大手法律事務所レイサム・アンド・ワトキンスが考えた裁判制度は、「独立性」をうたいながらも国王の直属機関となっており、シャリア(イスラム法)に基づいて運営される。