弁護団によると、西山さんから自供を引き出したのは、威圧感ある怖さと優しさを使い分ける巧妙な刑事のトークでした。写真はイメージです Photo:PIXTA

滋賀県東近江市の湖東記念病院で人工呼吸器を外して患者の男性(当時72)を殺害したとして、殺人罪で懲役12年が確定し、服役後に再審開始が決定した元看護助手西山美香さん(39)の再審公判で、検察側は新たな証拠を提示しない方針が明らかになった。事実上の“敗北宣言”で無罪がほぼ確実になった。一方で検察側は求刑放棄や無罪論告はせず、曖昧な姿勢を貫いており、関係者から疑問や批判の声も上がっている。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

検察側の手詰まり

「事実上の有罪立証断念だが、趣旨が曖昧で分かりにくい。はっきりと無罪を認めるべきだ」

 23日、記者会見した西山さんの井戸謙一弁護団長は語気を強めた。検察側が、再審公判で新証拠による立証をしないと書面で通告してきたという。

 弁護団によると、検察側は従来の証拠に基づき有罪主張そのものは取り下げないが、弁護側の無罪主張には積極的に反論しないというスタンスらしい。

 また検察側は確定判決で有罪の決め手となった「呼吸器のチューブを外して殺害した」という自白調書を再審公判で証拠として維持するかは、裁判所の判断に委ねるとした。