福岡堅樹1月18日に行われたトヨタ自動車との試合に出場した福岡堅樹 写真:SportsPressJP/アフロ

世界中を熱狂させた、昨秋のラグビーワールドカップ日本大会で4トライをゲット。日本代表を史上初のベスト8へ導いたヒーローになった福岡堅樹(パナソニックワイルドナイツ)が、開幕したばかりの今シーズンのトップリーグに別れを告げた。肉体改造を施しながら次なる照準を定めるのは、7人制ラグビーが実施される今夏の東京五輪でのメダル獲り。ヒノキ舞台の先には医師になる夢を描く、27歳の韋駄天ウイングが歩んできた過去・現在・未来を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

五輪挑戦直前、左ひざを痛めて
日本代表候補合宿2日前に辞退

 誰よりも福岡堅樹本人が、無念の思いを抱いている。開幕したばかりのラグビートップリーグで、2試合に出場して3トライをゲット。日本中を熱狂させた昨秋のワールドカップ日本大会を彷彿とさせる大活躍を演じた直後に、まさかのアクシデントに見舞われたからだ。

 心配を寄せていたファンへ向けた謝罪の言葉とともに、現状を報告する呟きを福岡が自身のツイッター(@kenki11)に投稿したのは今月22日の夜だった。

<ご心配をおかけして申し訳ありません。 まずはしっかりと治して、不安のない状態で参加できるようにしたいと思います。>(原文のまま)

 トップリーグの歴代最多記録となる3万7050人の大観衆が豊田スタジアムへ駆けつけた、18日のトヨタ自動車ヴェルブリッツとの第2節。日本代表でもお馴染みの「11番」を背負い、パナソニックワイルドナイツの左ウイングとして先発した福岡は、前半30分すぎに苦痛で表情を歪めている。

 パスを受けて加速しかけた瞬間に足を滑らせ、激しく転倒し刹那に左ひざを痛めてしまった。コート上でメディカルスタッフによる治療を受け、テーピングで患部を補強してプレーを続行した福岡はそのままフル出場。後半37分にはインターセプトから、貫禄のトライを決めている。

「帰ってしっかりと検査をしたい。そこに関しては問題ない、と思っています」

 試合後には左ひざを冷やしながら、問題なしを強調した福岡が言及した「そこ」とは、相模原ギオンスタジアムで25日に行われた三菱重工相模原ダイナボアーズとの第3節ではない。24日から埼玉県熊谷市内で行われた、東京五輪に臨む7人制ラグビーの日本代表候補合宿を指していた。

 しかし、合宿開始を2日後に控えた22日に、日本ラグビー協会を介して福岡の辞退が発表される。冒頭のツイートは発表から数時間後に投稿されたものだ。かねてから東京五輪への挑戦を表明していた福岡が、熊谷合宿に参加することが発表されたのはトヨタ自動車戦前日の17日だった。そして、本格的に7人制ラグビーの道を歩み始めることはイコール、15人制とは一線を画すことを意味している。