新型ウイルス、いかに経済政策を一変させたかPhoto:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 新型コロナウイルスは世界経済にとって、2008年以来、最大の脅威となった。当時と大きく異なるのは、何をすべきかについて、驚くべきコンセンサスが醸成されたことだ。

 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の流行は、その特質が故に経済政策を恒久的に変える力を持っている。

  これまで慎重だった欧州中央銀行(ECB)でさえ、18日に7500億ユーロ(89兆円)規模の新たな債券買い入れプログラムを打ち出した。これには、ユーロ圏の財政がぜい弱な国を下支えするという大胆な可能性も含まれる。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は、銀行や企業への資金支援や外国中銀との通貨スワップ協定など、流動性がひっ迫した12年前に導入した政策手段をすべて再び総動員した。

 重要なことに、こうした中銀の動きは、政府による一連の財政出動(雇用安定化の主要手段として財政刺激策が否定された1970年代以降で、経済政策における最大の変化)と同時に行われた。UBSのエコノミスト、アレンド・カプテイン氏によると、世界の財政拡張は今年、国内総生産(GDP)比およそ2%となる見通しで、2009年の1.7%から上昇する。

 計画には、つい最近まで主流ではないと考えられてきたものも含まれる。トランプ米政権は国民に2500億ドル(約27兆7400億円)の現金支給を求めている。エコノミストらは、中銀に現金支給を担当させる、いわゆる「ヘリコプターマネー」や、全員に最低所得を保障する「ベーシックインカム」といった異端な提案をも主張している。

 新型コロナによる現金ひっ迫は、2008年当時ほどは、当局者の経済学の理解に対する強力な挑戦にはならなかっただろう。しかし、世界的な金融危機が真の変化をもたらしたのは、政府ではなく、中銀がどこまで行動できるかだった。国際通貨基金(IMF)が「拡張的緊縮」理論を依然として主張する中、オバマ政権の刺激策は強い抵抗に遭った。

 だがここにきて、当局者もエコノミストもほぼ全員が、新たな思考を推進することで団結しているようだ。何が変わったのか?