スマート農業の可能性(第1回):農林水産×ITの枠から社会サービスの創造へと拡大

農林水産省

農林水産・食品産業とITなどのクロステックを促し、新たな未来像を創造する『「知」の集積と活用の場Ⓡ』プロジェクトは、活動開始から5年目となり具体的な成果を示し始めた。市場創造の支援にまで踏み込む補助政策が、単なる技術融合から幅広い社会サービスの創造を促している。

スマート農業の推進にも取り組む
プロジェクト第2期

「我が国の農林水産・食品産業の競争力を強化し、成長産業化を促進するために、農林水産・食品分野に他の分野のアイディア・技術などを導入し従来の常識を覆す革新的な技術・商品・サービスを創出する場」――。

 こう定義されているのが農林水産省の『「知」の集積と活用の場』だ。農林水産・食品業と他業種の技術の融合を目指すクロステックプロジェクトといえる。同プロジェクトは、①プロジェクトの推進・運営母体である産学官連携協議会の活動、②研究開発プラットフォームの活動、③研究コンソーシアム(リサーチプロジェクト)の3層構造で展開されている。協議会の活動で多様な分野のマッチングを促し、プラットフォームで研究課題の具現化、ビジネスモデル等の策定、研究コンソーシアムで技術実用化に必要な研究開発を行うという流れである。

 同プロジェクトの革新性への関心は年々高まっている。活動は2016年度に始まり、初年度から5年間が第1期と位置付けられた。その4年を終えた20年3月末段階で、産学官連携協議会の会員数は3430人と2年前(2381人)に比べ約1.4倍に増えている。農林水産・食品産業をはじめ電機・精密機器、化学工業、情報通信などの多様な企業や団体が参画している。

 会員数の増加と比例するように研究プラットフォームは7領域で170件に増え、実証化への段階を目指す研究コンソーシアムは157件と2年前の43件から4倍近く増えた。

 20年6月25日に開かれた産学官連携協議会の定時総会で川村邦明会長(前川製作所専務取締役)は、「農林水産・食品の領域における異業種融合の可能性の高さを多くの人々が認め、共に挑戦する熱意は、会員数や研究コンソーシアムの増加に端的に示されました。21年度以降からはプロジェクトは第2期に入るので、新型コロナ禍への対応も踏まえた新たな指針を示したい」と語った。

「『「知」の集積と活用の場』 産学官連携協議会」の2020年度総会。新型コロナ禍のためネット配信で開かれた
協議会定時総会のゲストセッションとして開かれた「日本を取り巻く投資環境と農業シーズの事業・スケール化」。司会はBeyond Next Venturesの有馬暁澄氏(左)が務め、アグロデザイン・スタジオの西ヶ谷有輝社長(中央)、PLANT DATA社の北川寛人社長(右)らが自社の事業について説明した

 定時総会で提示された第2期の大きな柱の1つが、スマート農業の推進だ。

 第2期目の方針でうたう「スマート農業の推進」では、スマート農業の社会実装を進めるために必要な、スマート農機のシェア等の関連サービス産業に関するプラットフォームの活発な活動が期待されており、その取り組みを実感させられたのが、定時総会にゲスト報告で招かれた2例の取り組みだ。

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