発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。

発達障害の僕が発見した「何度決意しても朝起きられない人」に決定的に欠けていること

「起きる」という抽象的な行為を具体化する

 皆さんは朝起きるのは得意ですか? 僕は苦手です。小学校時代の不登校は、そもそも「朝起きられない」から始まっていますし、金融機関時代も、寝坊するのが怖くて徹夜して会社に行っていたくらいです。

 そもそも「朝起きる」という行為はあまりにふわっとしていて、抽象的です。僕らに必要なのは「意志力」でも「気合い」でもなく、「起きる」という目標を具体的な動作にすり替えることです。僕はこの「すり替え」=寝起きでもできる簡単なルーチンを決めることで、起きるハードルを極限まで下げることに成功しました。

 具体的には、
・目薬
・薬局で売っている「顔がスーッとするシート」
の2つを枕元から1メートルの位置に置き、目覚ましが鳴ったらこれらを取るために布団から出るのです。

 このハックで僕は二度寝の完全な撃退に成功。目薬は「スッキリ強刺激!」みたいなやつがおすすめです。ちょうどドライアイに悩んでいたのでそれも大変助かりましたしね。

 そしてもうひとつ。「カーテンに手が届く場所で寝る」もあわせて実践しています。気づきそうで長年気づかなかったライフハックですが、太陽を浴びるのは気持ちがいい。朝日が差し込む家であれば暴力的とさえいえる効果を体験できると思います。

不快さを排除し、快適さを増やす

 あたりまえのことですが、僕たちはは苦行よりも「気持ちいい!」と感じる刺激が好きです。この2つのハックは、その性質を最大限利用したのです。

 なお、僕は今度、最近買った小型冷蔵庫に朝食を入れておこうかな、と考えています。朝ならちょっとくらい甘いものを食べていいのが僕のルールですので「そうだ、冷蔵庫にクリームパンがある……起きよう……」そんな気持ちで目を覚ましてみたいものですね。

 目覚めハックはひとつでは挫折してしまったとしても、いくつも積み重ねれば積み重ねるほど、成功率が上がります。あなたもぜひ、自分自身の目覚めハックを組み上げてみてください。くれぐれも意識を高くしすぎないのがコツです。朝イチでストレッチをして軽くランニングをする、とかは絶対にやめておきましょう。