「雑草」の生き方にみる、ビジネスで弱者がしたたかに生き残る戦略雑草の性質からビジネスにも生かせるポイントとは? Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。

予測不能な変化の時代に
したたかに生き残る「雑草」

「雑草魂」という言葉がある。雑草のように、踏まれても、厳しい環境にあっても立ち上がる、不屈の精神を指すことが多い。

 よく知られているのは、元プロ野球投手で現在は野球解説や野球評論などで活躍する上原浩治氏が、座右の銘を「雑草魂」としていたことだ。同氏が巨人の先発投手としてデビューし、20勝を挙げて新人王に輝いた1999年には、「雑草魂」がユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞を受賞している。ちなみに、現在上原氏が主宰するYouTubeチャンネルは「上原浩治の雑談魂」である。

 実は私は、巨人時代の上原投手の大ファンだったのだが、「雑草魂」には少しだけ違和感があった。

 おそらく、自他ともに認める負けず嫌いの性格と、甲子園出場経験がなく、大学も全国的に知られた強豪ではなかったことから、「エリートではない」として選んだ座右の銘なのだろう。同じ年に西武ライオンズに入団した甲子園のヒーロー、松坂大輔投手への対抗意識もあったはずだ。

 だが、入団当初から巨人のエースとして活躍した上原投手は、どこから見ても「エリート」だった。テンポよく投球し、軽々とバッターを打ち取っていくさまも、「雑草」のイメージではなかった。