視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
世界の主要通信インフラベンダーとして
生まれ変わった「ノキア」
今から10年以上前、私は初めてスマートフォンを買ったのだが、それはノキアのE61というモデルだった。ノキアはフィンランド発のグローバル企業で、当時携帯電話市場ではトップクラスのシェアを誇っていた。
ノキア独自のOSで動くE61は、胸ポケットにすっぽり納まるコンパクトなボディーが魅力で、パソコンのような小さなQWERTYキーボードを、カラー液晶ディスプレーの下に搭載していた。
当時、すでにiPhoneは登場しており、日本国内でも販売を開始していた。しかし私は、小型であることと、使い慣れたQWERTYキーボードにひかれ、E61を選んだ。電車の中などでノートパソコン代わりに使えるかもしれないと考えたのだ。
だが、そんな期待は購入後すぐに打ち砕かれた。小さなキーボードはとても打ちづらく、そのキーボードがあるせいで液晶画面が小さすぎて見づらかった。
結局ほとんど活用できず、メインの携帯は、以前から使っていたガラケーに戻し、E61はほこりをかぶることになった。
その後、ご存じのようにスマホ市場は、ほぼiPhoneとAndroid搭載端末で独占されていく。ノキアは、新機種はおろか名前さえも聞かなくなった。倒産したかと思ったほどだ。
ところが最近、ネットサーフィン中に久しぶりにノキアの名を見かけた。なんでもノキアは今、米国、中南米、欧州、韓国、オーストラリアなどで48件(2019年9月30日現在)の5G(第5世代移動通信方式)商用サービスを契約しているという。ノキアは「通信インフラベンダー」として生き残っていたのだ。