藤田香氏日之出産業の取締役・藤田香氏(著者撮影)

アフリカの若者を受け入れてビジネス拡大

 横浜市に本社を置く排水処理の専門企業である日之出産業は、いまアフリカの若者が集まる拠点になりつつある。同社取締役の藤田香さん(58歳)はこう言って頬を緩ませる。

「アフリカの人たちが当社にひっきりなしにやってくるようになりました。先日も南アフリカ出身の卒業生が、ヨハネスブルクとケープタウンで事業を展開している兄に日本の技術を紹介したいと一緒に来社し、その後、南アフリカで再会。水処理ビジネスを展開したいと、とんとん拍子に話が進み、現在契約交渉中です」

 まだ、実績づくりはこれからだが、社員13人の日之出産業は、確実にアフリカにビジネスの土台を築こうとしている。

 そのきっかけは、2013年に横浜市で開催された第5回アフリカ開発会議(TICADV)において日本政府が計画を発表した「ABE(アフリカの若者のための産業人材育成)イニシアティブ」(African Business Education Initiative for Youth)である。このとき、当時の安倍晋三首相は5年間で1000人のアフリカ青年を招聘すると宣言した。

 14年から実際に事業が始まり、2018年までにすでにアフリカ全54カ国から1219人(22歳から40歳未満)が来日した。最大3年間滞在し、大学院修士課程で学ぶとともに、企業においてインターンシップとして夏季2週間および修了後、最長半年間、研修を受ける。この企業研修がABEイニシアティブの肝である。つまり、単なる留学だけではなく、帰国後、ビジネスリーダーとして雇用を生み出し、日本とアフリカの橋渡し役になることが期待されているのだ。そのため、選ばれた優秀な人たちが対象者となる。

 同社は13年のTICADVに参加、排水処理技術を紹介するブースに出展した。

「多くのアフリカ人関係者がブースに集まり、熱心に水処理の話を聞いてくれました。そのときに初めてアフリカでの環境ビジネスに可能性を感じて、インターンを受け入れることにしたのです」と、藤田さん。

 16年の夏から受け入れを開始、これまでに17カ国39人のインターンが同社で学んだ。さらに、19年1月にはセネガル人男性、10月にはモロッコ人女性を社員として採用、いよいよ本格的にアフリカへの展開が始まる。