週末の昼下がりにもかかわらず、なぜか上海の商業施設に買い物客が少ない。その理由についての定説は「ネット販売に客足を取られたせい」というものだったが、それだけではなかった。塾や習い事に通う子どもが多いため、「子連れの外出」がほとんど見られなくなっているのだ。コロナ禍前でもおもちゃ売り場に子どもの影すらなかった。背景には中国で過熱する教育競争がある。(ジャーナリスト 姫田小夏)

学習塾の規制を始めた中国

「子ども」をコンセプトにした商業施設「子ども」をコンセプトにした商業施設だが、肝心な子どもはまばら(著者撮影)

 中国の都市部では、多くの子どもが学外の時間のほとんどを学習塾や習い事に費やす。義務教育期間の生徒を含む学習塾の市場規模は8000億元(13兆1200億円、1元=約16.4円、2016年レート)、参加する生徒数は延べ1億3700万人(中国教育学会、2016年)といわれている。中国教育部(日本の文部科学省に相当)によれば、2020年中国で義務教育を行う学校の数は21万校を超え、在校する生徒数は1億5600万人に上ったが、実に8割以上の親が「子の塾通い」に賛成している。

 どんなビジネスでも、高い需要があれば料金も跳ね上がる。学習塾業界も例に漏れず、学費の上昇は近年激しくエスカレートした。この学習塾の存在が、「子どもを産みたがらない」ことの遠因となっていることは間違いない。そこで中国政府は、義務教育を受ける小中学生を対象にした学習塾の規制に乗り出した。