累計38万部突破の超人気シリーズ最新刊、『自分の意見で生きていこう』の発売にあわせ、同シリーズに関連するコンテンツを随時公開する連載がスタート。第1回は、同書の「はじめに」を全文公開します。人気社会派ブロガー・ちきりんさんは、「論理思考」「マーケット感覚」「生産性」に続くテーマに、なぜ「意見」を選んだのでしょうか?

人気社会派ブロガーは、なぜ「意見」についての本を書こうと思ったのか?Photo: Adobe Stock

「正解のない問題」に、自分の意見を明確にすることの重要性

 みなさん、こんにちは。

 私は社会派ブロガーと称し、さまざまな社会問題について「Chikirinの日記」というブログに書いているほか、ツイッターでは日々のニュースについてあれこれ感想を呟き、最近はボイシー(Voicy)というプラットフォームで音声配信も行なっています。

 こうした発信活動こそが今や私の本業なのですが、その根底にあるのは、「さまざまな事柄に関する自分の意見を発信したい!」という欲求です。

 でも以前は、そんなことについて本を書くなんて考えてもいませんでした。なぜなら、「自分の意見を明らかにする」なんて、私にとってはあまりに当然、かつ身近な行為であったため、わざわざ人に説明する必要など感じていなかったからです。

 けれどここ数年、その考えが変わりました。理由はふたつあります。ひとつは、私のように「なんであれ自分の意見を明確にするのが当然」という人は、そこまで多くないと気づいたからです。

 なにかについて意見を問われても「よくわかってもいないのに、意見をもつなんて不可能」とか「間違っているかもしれないから、意見を言うのは不安」などと怖れている人が想像以上に多いと気がついたのです。

 もうひとつの理由は、新型コロナの感染拡大で社会が大きく揺れたことを契機として、あらためて「世の中にも人生にも正解のない問題がたくさんある。そして、正解のない問題に自分なりの答え、すなわち意見がもてなければ、人生も生活もぐちゃぐちゃにされてしまう」と再認識したことです。

 本書内でも説明しますが、人生における大切な問題にはどれも唯一の正しい答えなどありません。学校で習った算数の問題とは異なり、どこに就職するか、どんな働き方をするか、どんなスタイルで暮らしていくかなど、人生を左右するような問題にはいずれも正解がないのです。

 だから「正解のない問題」について自分の意見が明確にできなければ、自分オリジナルな人生を作っていくことができません。どこに住み、誰となにをして暮らし、なにに時間とお金とエネルギーを注いでいくのか。ひとりひとりの人生は、そういった正解のない問題への答え(選択)によって形成されていくのです。

 しかもAIをはじめとした技術の進化や、グローバル化による価値観の変化、SNSの普及による否応のない承認欲求の増大などにより、私たちが人生で直面する「正解のない問題」はますます増加しています。

 それらひとつひとつにしっかりと自分なりの答えを出していくには、もう一度意識的に「自分の意見」の重要性と向き合う必要がある。そう思えたことが、本書を書きはじめるきっかけとなりました。

 本書では、まず第1章で「意見とはなにか、なぜ必要なのか」を説明しています。ここでは他のすべての章の土台となる基本的な概念を説明していますので、必ず最初にお読みください。

 第2章から第5章までは、世の中で起こりつつあるさまざまな事象を取り上げつつ、意見の重要性を多角的に語っています。各章のテーマはゆるやかにつながってはいますが、それぞれ独立してお読みいただくこともできるでしょう。

 第2章で取り上げる反応と意見の違いや、第3章で取り上げるネット人格については、今や生活の一部となりつつあるインターネットやSNSの存在を前提とする社会での意見の価値について考察しています。

 一方、第4章と第5章では、現代社会における「生きづらさ」問題や、家庭や職場におけるリーダーシップ問題など、リアルな社会やコミュニティにおける課題をもちいて、意見をもつことの意義について説明しました。

 そして第6章では全体のまとめとして、オリジナルの人生とはなんなのか、私自身の経験から語っています。

 最後の練習編は、第1章から第6章までをお読みいただき、「自分も意見をきちんと言えるようになりたい!」と思われた方向けに、実践的な訓練ができるよう付け加えました。ぜひ、ゆっくり時間をかけて練習をしてみてください。

 とはいえまだこの時点では、「そこまで意見が大切ってどういうこと?」と不思議に思われているかもしれません。しかしこの後の4コマ漫画で示すような日常的な場面も実はすべて「意見の価値」とつながっています。その関係は各章にて少しずつ明らかにされますので、ぜひお楽しみになってください。

 また、本書を最後まで読んでいただいたあと、これらの4コマ漫画をもう一度見なおしていただければ、「意見」というものが難解な社会的課題に関してのみ必要とされるものではなく、私たちの身近な生活と密接に結びついているのだということがより深くご理解いただけるかと思います。

 正解のない問題がますます増えるこれからの社会においても、自信をもって自分自身の人生を歩んでほしい。自己肯定感の高い、自分なりに幸せだと思える人生を手に入れる人が増えてほしい。そのために必要な「自分の意見を明確にする」ことの意義と、具体的な練習方法を多くの人に伝えたい。この本を書こうと思った原点ともいえる思いが少しでも達成され、みなさまのお役に立てますよう、心から願っています。