普通の人が記者になって、取材し、記事を書き、発信する。「市民記者」のためのインターネット・ニュースメディア。その代表的存在である「オーマイニュース」日本版は2006年8月に創刊した。今回は昨年末に3代目の編集長に就任した平野日出木氏に、「オーマイニュース」の現状について聞いた。

平野編集長
平野日出木(ひらの・ひでき) 1985年早稲田大学政治経済学部卒、日本経済新聞社入社。産業部、証券部、西部編集部にて記者。コロンビア大学で日本の政治・外交・産業を研究。産業部次長(本紙デスク)を経て2000年退社。02年カリフォルニア大学バークレー校MBA。フリーランス記者を経て06年『オーマイニュース(日本版)』の創刊に編集次長として参画。07年12月より現職。主著に『「物語力」で人を動かせ!』(三笠書房)。

――日本企業の中国駐在員の“夜の生活”をレポートした「『小姐』は現代の従軍慰安婦か」(2007年12月20日付)は、新聞やテレビなどの既存マスメディアではなかなか報じられないユニークな記事で、サイト上で激しい論争を呼んでいました。

 多くの日本人駐在員が中国の若い女性「小姐」を“買春”したり、愛人にしたりしている実態を、北京の中国人女性記者、趙秋瑾氏が書いたものです。

 実態あるいは記事への批判が数多く寄せられ、それに対する趙氏からの反論、さらには実際に日本人の愛人になっている小姐を別の日本人記者が取材した記事が掲載され、議論が盛り上がりました。

──その記事で紹介された駐在員の掲示板サイトに書かれた内容は、中国人女性を侮蔑したものが多く、その点を趙記者は強く非難していますが、読者からタイトルの問題点(記事の内容と従軍慰安婦とは関係ない点)を指摘されると反省するなど、冷静な議論になっています。

 同じ趙記者が書いた「海賊版DVDは永遠に不滅です!」(08年1月8日付、中国で海賊版DVDが広く流通している状況や背景などの記事)では、質の高い議論が展開されたと思います。

 日本の読者から「知的財産権に対する意識が低い中国への批判」が続く一方、趙記者はその問題は認めつつ、1人当たり所得で先進国との経済格差が大きい中国に対して、先進国と同一水準の知財権使用料を課すと、外国文化の輸入が低迷するデメリットを説いています。