富士重工業の営業利益率が、自動車業界で群を抜く水準を続けている。好調な販売を続ける米国で、その勢いが止まらない。これはブームなのか、あるいは今後も続くのか──。

「とても逼迫しているんだ(Very,very low.)」──。11月中旬、米ミシガン州デトロイト近郊でスバルのディーラーを長らく共同経営しているフェリペ・メンディオラ氏は、最近の在庫状況についてそう“窮状”を訴えた。

 窮状といっても、供給が追い付かないほど売れて仕方がない、という話だから“うれしい悲鳴”でもある。このディーラーは、年間600台以上のスバル車を販売。「もっと車が手元にあれば、まだまだ売れそうか?」と尋ねると、「間違いないよ!(Definitely yes!!)」。いかにも商売っ気のあるギラギラした答えが返ってきた。

 今、スバル車を売ろうという米ディーラーの鼻息は荒い。2008年の金融危機以降、富士重工業は米全体の3割弱を強力なディーラーに入れ替え、販売網を再構築した。メーカー出資店舗の多い日本とは異なり、オーナー経営の多い米ディーラーは複数のブランドを併売するのが一般的で、“売れるブランド”の動向に敏感だ。破綻したクライスラーなど米トップブランドを売っていた販売力のある新規ディーラーが、当時から勢いを見せつつあったスバル車を積極的に扱うようになった。

 かつて「雪道に強い」というイメージの強かったスバルはスノーベルト(米北東部・中北部)でのシェアは高かったが、このときサンベルト(南部)でのディーラー開拓も進めている。今は米国のテレビCMも、必ずしも雪道を走るものだけではなくなっている。

 勢いは力強く続いている。金融危機前の07年、19万台弱にすぎなかった米国販売台数は、13年には42万台強へと2倍以上に拡大。今やスバルの世界販売台数の約6割を北米が占める。今年10月末にはついに米国でトップ10入りを果たし、シェアも07年の1.2%から3.1%まで躍進した。