専門技術を生かして、「第2の人生」を充実させている人は存外多い。国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティアとして現在、世界で活躍しているのは約430人。どんな活動をしているのか

  語学力と専門技能を生かして、海外に勇躍する人たちがいる。

 スリランカの職業訓練所で、農業機械の整備・修理ができる整備士や指導員の育成・指導を行っている菱田幸夫さん(67才)もその一人。

英語力と専門技術を生かして<br />「人生の後半」を充実させる人たち<br />スリランカの職業訓練所で農業機械の整備・修理を指導する菱田幸夫さん

 国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティアとして、2013年10月から2年間の予定で、スリランカに派遣されている。

 09年に内戦が終結したスリランカでは農業機械の普及が加速しているが、取り扱い指導や整備・修理技術が追い付いておらず、技能レベルの底上げを図るのが菱田さんの役目だ。

 実は菱田さんにとっては、これが2度目のスリランカ駐在。大手農業機械メーカーを定年退職した直後にもシニア海外ボランティアとしてスリランカの職業訓練所に赴任した。「第2の人生として自分の技術が生かせるボランティア活動を海外で経験してみたかった」という菱田さんは、定年の半年ほど前にボランティアに応募したのである。

「高校時代まで英語が不得意だったが、習うより慣れろと思い、大学では英会話クラブに入った」という菱田さん。英会話のテキストを暗記したり、講師役だった教会のシスターと英語で話したりしたことが今の語学力の基礎となっている。

 ボランティアとしてスリランカに赴任する前は、JICAの訓練所で1日5~7時間、計約250時間、公用語であるシンハラ語の特訓も受けた(当時の研修制度)。「60才を過ぎてゼロからの語学勉強は記憶力の低下もあって、なかなかはかどらなかった」というが、簡単な日常会話と読み書きはできるようになった。語学は集中訓練の効果が大きいことをあらためて実感したという。

 そんな菱田さんだからこそ、「語学を一人で勉強するのは大変。自分のレベルに合った語学ボランティアや英会話クラブに所属するとか、短期の海外ホームステイをしてみるとか、いろいろな経験や交流を重ねることが語学力向上の決め手だと思います」とアドバイスする。

協力隊400人超が海外活動
選考後、語学の合宿研修

 菱田さんのようにJICAのシニア海外ボランティアとして派遣された人は、延べ5600人以上。現在は約430人がアジアや中南米などの開発途上国を中心に、政府機関や教育機関などで活躍している。