私は『週刊ダイヤモンド』などで、新政権が早急に経済計画の策定に着手すべきだと主張してきた。だが、新政権にはそんな意欲は全くないらしい。
経済財政担当大臣も兼ねている菅直人副総裁は10月31日の講演で、こう明言したという。
〔11月1日 日経新聞〕
「私はあえてこの半年は足元の景気を見る」
これは「成長戦略や財政再建の見通しがないとの批判を気にして」(同紙)の発言らしい。
これには驚いた。半年といえば、来年の参院選までということか。それまでは展望も指針もなしで経済運営することになる。
自民党・官僚批判の前に
「経済五ヵ年計画」の策定を
最近の日本のマーケットの動きにはためらいがあるように感じる。それは新政権の経済政策を見究めようとしているからだろう。逆に言えば、中・長期の日本経済の展望を政府が示すのを待ちわびているのだ。
菅氏はそこで、「自民党のこれまでの経済政策を『中期見通しを何度も出しているが一度も成功していない』とこき下ろした」という。
財務省の中期計画と混同しているのではないだろうが、これらの発言は間違っている。
池田勇人内閣の所得倍増計画は別格だったが、多くの経済計画が「成功していない」とは思わない。確かにその達成度だけを見ると成功したと言えるものは少ない。
だが、少なくとも政権の政策運営の方向は明らかにしてきた。政権が日本経済の方向と指針を示すことは当然の責務だろう。特に現在のような危機的な状況ではなおさらだ。