
西岡純子
日本経済の隠れた弱点は貿易などの交易利得が減少していることだ。アジアの低価格品との競争を意識してコスト削減には力を入れたが、製品差別化で輸出価格を引き上げる取り組みを後回しにしたからだ。

労働需給が逼迫する中で賃金上昇が期待されてきたが、就業率に陰りがでてきた。企業収益の改善に続き賃金上昇で「デフレ脱却」を確実にし、金融政策の正常化を本格化させたい日銀の戦略は怪しくなった。

海外投資による収益で稼ぐ経済に変わってきた日本だが、一方で企業の日本離れも加速している。国内の雇用増や新産業育成につなげるには資金の国内への還流を促す税制などの拡充が必要だ。

人気取り政治が財政赤字を拡大する懸念からイタリアなどで金融市場が混乱しているのに、放漫財政がもっと深刻な日本で混乱が起こらないのはなぜか。大丈夫だと勘違いされている3つの「安心材料」があるからだ。

トランプ大統領の「米国第一主義」による高関税措置は、秋の中間選挙をにらんだ思惑が強いとの見方が多いが、“中国封じ込め”や貿易赤字削減の成果を狙った長期戦略の可能性が高い。通商摩擦はこれからが本番だ。

戦後の記録を更新する長い景気拡大局面が続き企業業績も好調だが、その実感がないのは理由がある。2000年代以降、企業の利益の“稼ぎ方”が、人件費の抑制や投資も海外企業のM&Aが中心になり、国内の投資や賃金が伸びなくなったからだ。
