夏の高校野球・選手権大会の代表校が出揃った。

 例年は47都道府県に、面積が広い北海道と参加校が多い東京のみ2枠が認められる49校の出場だが、今回は第90回の記念大会で出場枠が増える。参加校多数の千葉、埼玉、神奈川、愛知、大阪、兵庫の6府県にも2枠が与えられ、55校の出場となった。おかげで大阪からは大阪桐蔭と近大付の強豪2校が出場、代表になるチャンスが増えたことで神奈川からは慶応が46年ぶりに出場を果たすなど話題は豊富になった。北京オリンピックと日程はダブるが、ファンにとっては見どころの多い大会になりそうだ。

全国に広がる
ファンの「公立校」びいき

 ところで各地区の代表校が決まっていく過程で感じたのが、そのチームが私立高校か公立高校かをファンが気にする傾向が強くなっていることだ。たとえば宮崎では県立の宮崎商が決勝戦で強豪私立の日南学園を破って39年ぶりの選手権出場を決め、県内は盛り上がった。ひと枠増えた愛知からは県立大府が28年ぶりに、兵庫からは県立加古川北が初出場を決め、話題になった。

 現在の甲子園は私立高校で多数が占められている。今回も55校中38校が私立で、公立はその半数にも満たない17校だ。昨年の夏の甲子園を県立の佐賀北が制覇して喝采を浴びたように、少数派になった公立高校にファンの共感が集まるのだ。

 こうした見方は昔もあるにはあった。いい例が東京都立校の甲子園出場。1980年に都立国立が出場した時は「都立の星」と称賛された。2001年に都立城東、2003年に都立雪谷が出場を決めた時も注目された。東京は私立の強豪が群雄割拠している。その中で都立が勝ち抜くのは至難の業であり、判官びいきの意識が働いて褒めたたえられたのである。

 今はこの見方が全国に拡がったといえる。「公立高校が甲子園に出るのはエラい」という意識がファンに刷り込まれているのだ。

 理由はお解りだろう。昨年3月に起こった「特待生」を巡る騒動からだ。

長年黙認してきた「特待生制度」を
突然問題視した高野連

 発端となったのは西武ライオンズの裏金問題。岩手・専大北上出身の有望選手に裏金が渡っていたことが明らかになった。悪いのは裏金で選手にツバをつけようとした西武である。だが、なぜか高野連は特待生制度を野球憲章に反するとして問題視し、専大北上野球部を廃部させただけでなく、全国の高校野球部に対して「特待生制度は違反だから辞めなさい」と言い出したのである。