2040年時点で日銀が保有する
長期国債残高の試算値
日本銀行は2024年7月に国債買い入れの減額計画を示した。日銀が保有する長期国債残高は足元で570兆円程度だが、25年度末にかけて7~8%程度減少する見込みだ。その後も減少が続く公算は大きく、大和総研では40年に120兆~250兆円程度まで減少すると試算している。国債の発行残高が減らない中で日銀保有分が減れば、国債の保有構成は大きく変化する。
国債の国内需要の先行きを考える上では、日銀の需要減少分を他の主体がどの程度補えるかが重要となる。13年4月の量的・質的金融緩和の導入以降、大量の国債を日銀に売却してきた銀行等では、保有国債を増やす余地は大きいだろう。それでも、銀行勘定の金利リスク量などを踏まえると、国債の増加余地は300兆円程度と推計される。日銀を含む国内主体全体としては、国債保有を大幅に増加させることは難しいだろう。
一方、国債の供給面は政府の財政健全化の取り組みに依存する。大和総研の試算では、仮に国・地方のプライマリーバランス(PB)が27年度から均衡する場合でも、国債供給は長期的に増加が続く見込みだ。これまでの政府の財政運営を踏まえると、PBの赤字が続く可能性は高く、そうなれば国債供給の大幅な増加は避けられないだろう。
国債の国内需要と供給のバランスが悪化するため、需給を一致させるには海外投資家の国債保有の増加が必要だ。だが、海外保有の増加は長期金利の上昇圧力となるとの指摘がある。国内投資家よりも高いリスクプレミアムを要求する傾向が強いためだ。大和総研の試算では、海外保有比率の高まりによって長期金利は40年時点で最大で7%程度まで上昇し、実質GDPは6.5%程度減少する。
国債の保有構成が大きく変化することで、長期金利は財政状況をより反映するようになるだろう。金融政策の正常化で金利急騰リスクを回避するためにも、政府はPBの黒字化を早期に実現して国債供給の増加を抑える必要がある。大規模な補正予算編成からの脱却やワイズスペンディング(賢い支出)の徹底が不可欠だ。
(大和総研 シニアエコノミスト 久後翔太郎)