中国・鄭州の大学生たちが、50キロ先の開封まで自転車で移動している様子  Photo:VCG/gettyimages中国・鄭州の大学生たちが、50キロ先の開封まで自転車で移動している様子  Photo:VCG/gettyimages

開封の街を目指して……11月9日深夜、中国河南省の鄭州市から約50キロ離れた開封市に向かって伸びる幹線道路に、自転車の大群が現れた。「青春は無敵だ!」「自由のために疾走する!」などのスローガンとともに大学生たちが自転車を走らせる“深夜サイクリング”はブームになり、夜道を走るサイクリングは大学生以外にも瞬く間に広まった。報道によると、自転車の数はなんと20万台超。いったい、何が彼らを開封へと駆り立てたのか?(フリーランスライター ふるまいよしこ)

中国で自転車の大群が夜中にサイクリング

 開封へ、開封へ……11月9日深夜、中国河南省の中心都市、鄭州市から約50キロ離れたところにある同省第二の都市、開封市に向かって伸びる鄭開大道に銀輪の大群が現れ、道行く車両をびっくりさせた。メディアの報道によると、その数20万台超。実際にその様子をとらえた動画を見ると、同省の主要道路の一つである鄭開大道の片側車線が完全に疾走する自転車の大群に占領され、アリンコの群れのような自転車に包囲されて立ち往生している車まである。

 香港紙が報道したところによると、おかげで普通なら車で1時間で着くところが、この夜は2時間半かかったと、あるドライバーがぼやいていたという。また、一部ネットに流れた写真や動画を見ると、「ぼくらは自由のために疾走する!」などと書いたのぼりをわざわざ自転車に立てて走っていた人もいたようだ。

 いったい、何が彼らを開封へと駆り立てたのか?そのきっかけは、ほんの小さな遊び心だった。

 今年6月、鄭州市の女子大生4人が「開封の灌湯飽を食べに行こう!」と思いつき、「思い立ったが吉日」とばかりに開封市に向けて自転車を走らせた。「灌湯飽」とは、古都開封名物の、いわば「スープ入り小籠包」だ。電車やバスを利用するのではなく、大学生なら最も身近な乗り物である自転車で、というのもミソだった。さらに彼女たちがそのツーリングの動画をSNSにアップしたことがじわじわと注目され、次第にそれを真似て、「開封へ」「貧乏旅行を楽しもう」と自転車を走らせる学生たちが増え始めたらしい。