皮肉というべきか、政府・与党は10月30日に、介護現場の処遇改善に向け2009年度の介護報酬を「プラス3.0%」に決めたが、翌月には老人福祉事業者の倒産件数が過去最高を記録した。

 帝国データバンクによると、有料老人ホームなどの倒産は、7年が23件と前年の3.3倍に急増。しかし、今年は11月までに24件と、記録を突破した。

 今年7月には、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人(兵庫県)が全国初の民事再生法適用の申し立てを行なうなど、寒風が吹き荒れている。

 破綻の要因について、情報部は「06年の介護報酬の引き下げの影響が大きかった」と指摘する。なにしろ、3年ごとの改定は03年がマイナス2.3%、06年がマイナス2.4%(食費と宿泊費の自己負担分=1.9%を含む)と、減額のラッシュ。現場では、人手不足の悲鳴が渦巻いていた。

 社会保障審議会(介護給付費分科会)は、12月3日に介護人材の確保と処遇改善を柱に“たたき台”を発表。「施設における夜勤業務負担や重度・認知症対応への評価」や、各地域の賃金水準が反映されなかった給与について「報酬単価の上乗せ割合も見直す」と盛り込んだ。

 だが、介護報酬の「プラス3.0%」は、あくまで総額に対する割合。施設、訪問、通所などの各サービス、さらに職種ごとにアップ率は異なる。その枠組みの詰めは、今後の焦点だ。

 すでに、全国老人福祉施設協議会は、人件費比率を40%に設定されている介護保険施設について「平均60%を超えていることから、実態に合わせた見直しが必要」と要望。日本介護福祉士会は、処遇改善について「検証する仕組みを検討すべき」とした。

 最大の課題は、いかに介護従事者の賃金をアップさせるかだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部委嘱記者 内村敬)