今回は、ソフトバンク・NTTドコモ(以下、ドコモと略称)・KDDIなどの情報通信業界を取り上げる。第12回コラム(ソフトバンク編)と第13回コラム(ドコモ編)以来であるから、ほぼ1年ぶりの登場だ。この1年間で業績がどのように推移したのか、その足跡を追うことにしよう。

 材料として挙げられるのは「携帯情報端末」と「電子書籍」あたりだろうが、あいにく筆者には縁がない。一世代前のケータイ電話を、いまだに持ち歩いている。腕時計とスケジュール帳を不要にできるような、小型軽量サイズが筆者にとっては重要だ。“iPad”は持ち運びにかさばりそうなので、買うかどうかは思案中である。

 最近、電車に乗るときは、上橋菜穂子『精霊の守り人』シリーズを持ち歩いている。シリーズ8巻11冊をカバンに詰め込むよりも、電子書籍のほうが便利だとは思う。ただし、筆者の場合は専門書をはじめてして、その余白にやたらと書き込みをするクセがある。付箋やメモもペタペタと貼る。これを電子書籍に置き換えるのは難しい。情報の使い勝手は、人それぞれだといえるだろう。

 それにしても先日、都内の大型書店を訪れたり地下鉄に乗ったりした際、携帯電話を使って大声で話をしていたのが外国人ばかりだったのには驚いた。筆者には聞き取れない異国語で話をしていたので、気にはならなかったのだが。それに対し、ニッポン人は黙々と画面を睨んでのメール通信である。性格を「音声通話型」と「データ通信型」で分類する時代が到来したのかもしれない。

ソフトバンクのROEは大波乱
ドコモ・KDDIは「凪」の状態?

 前説はこのくらいにして、情報通信業界の話をしていこう。

 ニッポンの情報通信市場は、誰もが口を揃えて「ガラパゴス化」しているといい、国内市場は飽和状態にあるという。したがって、ソフトバンク・ドコモ・KDDIの業績は、長期低落傾向をたどって凪(なぎ)の状態で推移するだろう、というのが、経営分析を行なう際の「戦前の予想」になる。

 ところが、この1年間における四半期決算の内容は、分析する側からすれば惨敗続きであった。本連載で1年間ものブランクがあったのは、そのせいでもある。10年3月期に係る決算短信を眺めたときも、「これらの企業を解析したところで、作業の大半は徒労に帰すだろうな」という直感が働いた。

 しかし、負け戦を事前に予想して戦線離脱するのでは、この「サバイバル経営戦略」の名が廃(すた)る。大胆不敵な仮説を展開していくことによって、血路を開いてみることにしよう。