企業でも個人でも多様性がますます尊重される時代に入っていく中で、どのように生き、働いていけばよいか、経験豊かな5人のプロフェッショナルに聞いた。5人目は、財務省、有力弁護士事務所、ハーバード留学、大学での研究職――栄光と挫折を繰り返し、進路を拓いてきた山口真由氏に、次代を生き抜くためのレジリエント(※)な就活論を語ってもらった。(取材・文/奥田由意、撮影/鈴木愛子)
ゼネラリストの能力はない
仕事を通して認識
自らの経験を踏まえて就活の要点をお話しします。まず選択軸を設定してみましょう。成長機会の多い会社で仕事に没頭するか、仕事はほどほどにして私生活を大事にするか。ゼネラリストの能力を磨くか、スペシャリストとしてのキャリアを積んでいくか……。複数の選択軸を想定すると、何がやりたいのかが明確になっていきます。
就職先選びでは、知名度などだけでなく、社風や愛着度なども大切です。若いうちは夢を追えさえできれば十分と思いがちですが、待遇も重要。相応の報酬があればこそ仕事のつらさも我慢できます。
自分の強みは何かを内省することも不可欠です。
私は勉強が得意で東京大学を首席で卒業したことから、仕事でもこれまで通りやればトップでいられると思っていました。
しかし、最初に就職した財務省や、転職した弁護士事務所でトップの仕事には、ゼネラリスト的能力が要求されました。課題を的確に把握し、組織を結集して解決する。こうしたゼネラリストの能力が私にはないことを、仕事を通して認識しました。
二つの職場で挫折を経験し、ハーバード大学に留学。偶然受けた家族法の講義で、初めて能動的に興味を持って文献を読み、自説を発表したところ、教授に高く評価されました。そのとき、自分は文献を読むことが得意なのだと気付きました。家族法は心からやってみたい分野だと実感し、研究職という現在に至っています。