NTT傘下のNTTドコモは、競合のKDDIやソフトバンクに顧客を奪われて携帯電話の市場シェアを減らしてきた歴史がある。NTTの島田明社長は、それに歯止めをかけるためドコモに営業強化の号令を発した。特集『総予測2025』の本稿で、その狙いを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)
ドコモの携帯電話シェア
「これ以上は落とせない」
――NTTがNTTドコモを完全子会社化してから丸4年が経過しました。ドコモとNTTコミュニケーションズの組織統合は一定の成果を挙げているようですが、ドコモの携帯電話契約シェアの低下に歯止めが掛かっていません。
ドコモの携帯電話サービスについて私は「もうシェアを落とすな」「戦えるだけ戦え」と言っています。ドコモの料金プランには、KDDIのUQモバイルやソフトバンクのワイモバイルに相当するセカンドブランドがなかった。それがなければ若年層が獲得できず顧客はどんどん高齢化してしまうので、2023年に(低価格帯の)irumo(イルモ)を出しました。これで若い方々にドコモのファンになってもらうことが重要です。
今はとにかく営業活動を強化してシェアを維持しながら顧客の構成を変えてほしいとドコモのメンバーにお願いしているところです。
――ドコモはNTTから分離した1992年当時のシェアが61%。そこからシェアを徐々に落としてNTTの完全子会社前の20年3月末は37%、直近の24年6月末では35%です。
業界の市場シェアで3分の1を切ると首位から転落しかねないので、これ以上は落とせません。ドコモは業界のリーダーの気概を持つ必要があるので2番手になるわけにはいかないのです。
だから「絶対にシェアを落とすな、35%を維持するのだ」というシンプルなメッセージをドコモに送っている。本音ではシェア35%でいいとは思っておらず40%を目指せと言ってもいいのですが、現実問題として「下げるな」と。(金融や決済など非通信分野の)スマートライフ事業を強化するためにも、そのベースになる携帯の顧客基盤は大事なのです。
ドコモの携帯電話契約シェアの低下に危機感を隠さないNTTの島田社長。NTTグループの収益の源泉であるドコモの顧客基盤をどのように維持していくのか。次ページでは、ドコモの通信品質改善、NTTグループのAI(人工知能)投資、次世代通信基盤「IOWN」の戦略を含め、幅広いテーマについて本音で語った。