ビール大手のビール類の2010年上半期のシェア(課税ずみ出荷量ベース)が確定した。

 ビール類の総出荷量は前年同期比4.5%減の2億0753万ケースで上半期として過去最低を更新。今年は春の天候不順もあったが、市場縮小に歯止めがかからない状態を印象づけた。そんななかで、アサヒビールとサントリーがシェアを上げた。

 アサヒビールは上半期としては2年ぶりに首位に返り咲いた。シェア37.1%と、2位のキリンビールを0.7ポイントだけ上回る薄氷の勝利だが、昨年は年間シェアでも9年ぶりにキリンに敗れていただけに「トップ」の看板奪取は悲願で、今年3月に新社長を迎えたこともあり営業部門が意地を見せた格好だ。

 出遅れていた新ジャンル(第3のビール)で新商品の投入、主力の「スーパードライ」で人気俳優の福山雅治を起用したCMや、マイナス2度程度まで冷やした飲み方の提案など、需要掘り起こしキャンペーンも功を奏した。

 4社の中で唯一、出荷量が前年実績を上回ったのが3位のサントリー。高価格の「ザ・プレミアムモルツ」と、宣伝量の割に他社商品より安めの価格設定の店舗が多い第3のビールの「金麦」が好調で、シェアは過去最高の13.4%へ伸ばした。高級志向と節約志向が同居する昨今の消費者ニーズを上手にとらえたこと、この2商品へマーケティング資源を集中させたことが勝因だ。

 業界としてはボリュームが大きくて利益率が高く、「本来の味」との意識が強いビールのシェアが、4年ぶりに50%を上回ったことで「ビール復権」の期待が高まる。だが、一方で、ハイボール人気の高まりや、イオンによる1缶88円の韓国製第3のビールの発売など、ビール需要を奪う動きは激しさを増している。

 各社とも、長期的なビール離れという構造的な課題への解決策は打ち出せていない。シェア動向に一喜一憂している場合ではない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)

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