動きが鈍い日銀が一転、満額回答を
円高への歯止め効果はどれほどか?
10月5日、日銀は金融政策決定会合で、政策金利を実質的にゼロにし、不動産投信(ETF)などの金融資産を5兆円まで買い取る基金(ファンド)を設定することを決めた。
この決定は、市場の事前予想を上回る“満額回答”だったこともあり、株式市場は大きく反発し、為替市場でも一時ドルが84円近くまで買い戻されることになった。
今まで、「動きが鈍い」などと批判されてきた日銀が、今回市場の期待を上回る回答を行なった背景には、円高傾向に歯止めをかける狙いがある。米国が金融政策を緩和するごとに、為替市場ではドルが売られ、円高傾向が進行している。
そうした為替市場の動きに歯止めをかけるために、日銀は11月2日、3日に開かれる米国のFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される前に、機先を制して金融緩和を進めざるを得なかった。逆に言えば、日銀はそこまで追い込まれていたということだ。
とりあえずは奏功したように見える日銀の対応には、いくつかの問題点がある。
まず、本来の目的である円高の歯止め効果だ。政策が発表された翌日には、一時82円台にまで円高が進んでいる。その意味では、効果は限定的だったことになる。
また、今回の政策発動で、日銀の政策余地が一段と狭まった。今後、何か不測の事態が発生した場合に、日銀が切れるカードがほとんどなくなった。それは、日銀にとってもわが国経済にとっても、大きなリスクであることは間違いない。