インターネットなど、通信販売による医薬品の販売規制をめぐる検討会(第3回)が、3月31日に開かれた。規制を定めた省令を改正するには3月末がリミットといわれたが、その最後の検討会も議論はまとまらずに終わった。
ただし、慎重派と反対派で歩み寄りも見られる。
「(薬事法を改正する段階で行なわれた過去の検討部会で)議論に取りこぼしがあったかと言われれば、そうかもしれない」。ネット販売慎重派のキーパーソンといわれる日本チェーンドラッグストア協会の宗像守事務総長は、医薬品のネット販売の可能性について議論の余地があると冷静に語る。
検討部会は2004年から計23回にもわたって開催された。しかし最初の部会から現在までの5年間は新興のネット業界にとって長く、状況はだいぶ変わっている。
楽天の推計によれば、いまや医薬品の通信販売市場は約797億円、ネット販売市場だけでも約363億円の規模があり、利用者は約852万人に上る。もはや無視できない市場とニーズがそこにある。
また、「無理に規制に走ると、(薬剤師など専門家以外の)個人輸入者から医薬品を購入する人が増える可能性がある」(國領二郎・慶應義塾大学教授)など、安易なネット販売規制による新たな危険性も述べられるようになった。
省令改正には時間が足りないかもしれない。しかし、「救済措置ならまだ間に合う」と宗像氏は言う。「過去の検討部会に敬意を払い」(宗像氏)、ネット販売の法的枠組みの設定を視野に入れれば、監視体制の下、販売可能な医薬品を拡大する可能性はあるというのだ。
一方、楽天の三木谷浩史社長も、「ネットでは一部の薬はダメ、というのであれば、それには当然協力したい」と、規制の見直しがされるのならば諸条件はのむ意向だ。
今回の検討会で、ようやく論点の整理がされた。今後は、医薬品がリアル店舗等から入手困難な場合の対応方策として、ネット販売に可能性があるのかなど、踏み込んだ議論もなされる予定だ。改正薬事法の施行は6月1日。規制の見直しへの道は、時間との戦いになりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)