世界の心理学者が長年追求してきた「人生で成功するのに最も重要なファクターは何か?」がついに研究で解明された!ビジネスリーダー、エリート学者、オリンピック選手……成功者の共通点は「才能」でも「IQ」でもなく、もうひとつの能力「グリット」だった――。これまでの能力観・教育観を180度くつがえし、世界的ベストセラーとなっている『やり抜く力 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』から、その驚くべき内容を紹介する。

ハーバードはやり抜く力(グリット)で合格者を選んでいる

 ウォーレン・ウィリンガムが「性格的特徴研究プロジェクト」に関する研究論文(本連載第4回参照)を発表した年に、ビル・フィッツシモンズがハーバード大学の入学試験事務局長に就任した。

 その2年後に私がハーバード大学に出願したとき、私の応募書類を審査したのがフィッツシモンズだった。なぜそれがわかったのかというと、学部生のときに参加した地域奉仕活動で、たまたま一緒になったのだ。

「おお、君か!ミス・スクールスピリット!」

 私が自己紹介をすると、フィッツシモンズは大声で言った。そして、私が高校のときに行ったさまざまな活動を、驚くべき正確さで列挙した。

 先日、私はフィッツシモンズに電話をして、課外活動を最後までやり通すことについて、どのような見解を持っているかたずねてみた。すると予想どおり、彼はウィリンガムの研究を熟知していた。

 それで、彼はウィリンガムの結論に賛成したのだろうか?ハーバードの入学試験事務局は実際に、SAT(大学進学適性試験)のスコアと高校の成績以外の要素も考慮しているのだろうか?

 なぜそれが気になったのかというと、例の論文を発表した当時、ウィリンガムは、大学の入学試験事務局は課外活動を最後までやり通すことの重要性をよく認識していない、と考えていたからだ。

 フィッツシモンズの説明によれば、ハーバード大学には毎年、数百名の生徒がずば抜けて優秀な成績によって入学を許可される。どの生徒も早くから卓越した学業成績を収めており、将来、世界的な学者になることが期待される者たちだ。

 しかしフィッツシモンズの言葉を引用すれば、ハーバード大学は「自分が好きなことや、価値があると信じている活動に、わき目もふらず熱心に取り組み、厳しい鍛錬と努力を重ねてきた生徒たち」も同じくらいたくさん入学させているという。

 ただし入学試験事務局は、その生徒たちが、大学入学後もずっと同じ活動を続ける必要性があるとは考えていない。

「たとえば競技スポーツの場合、途中で負傷したり、よく考えてやめる決断を下したり、選抜チームに入れなかったりする場合もある。しかし、多くの学生を見てきてわかったことは、高校時代にそれだけ必死に部活に打ち込んで、鍛錬を積んできた生徒なら――それだけやり抜く力(グリット)が強ければ――どんなことをやっても同じように熱心に取り組める、ということだ」