家の収入と「やり抜く力」の相関関係
このときのフィッツシモンズとの会話で、私がもっとも驚いたのは、課外活動で「やり抜く力」を育む機会に恵まれない生徒たちのことを、彼が深く憂慮していることだった。
ハーバード大学の政治学者、ロバート・パットナムらの研究によれば、この数十年、アメリカの裕福な家庭の高校生たちの場合、課外活動への参加率は継続的に高い傾向にある。それに対し、貧しい家庭の高校生たちの課外活動への参加率が急激に低下しているのだ。
家庭の経済状況によって、生徒たちの課外活動への参加率に大きな差が出ているのにはいくつかの要因がある、とパットナムは指摘している。ひとつには、サッカーなど合宿等にお金のかかるスポーツ活動は、平等な参加が難しくなっている。参加費用が無料であっても、すべての親が子どもにユニフォームを買ってやる余裕があるわけではない。
また、練習や試合のたびに子どもを車で送り迎えする余裕がない親たちもいる。音楽の場合は、個人レッスンや楽器の購入にかかる費用を考えると、手が届かない場合もあるだろう。
おそらくパットナムには想像に難くないはずだが、家庭所得とグリット・グリッドのスコアには、懸念すべき相関関係が見られる。私の研究に参加した高校3年生のうち、国から給食費の援助を受けている生徒たちは、恵まれた家庭の生徒たちにくらべて、平均でグリット・グリッドのスコアが1ポイント低いことがわかった。
(本連載は書籍『やり抜く力 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』より抜粋しています)