中国はTPPの現状を喜べるのか?

 それゆえ、はじめから中国は盲目的な「TPP恐怖症」にかかるべきではない。現在のTPPをめぐる事態の展開は、中国の目の前に立ち込めていた霧を完全に払拭するものであり、TPPに対する過剰な恐れは全く根拠がないことを示している。

 しかし、その一方でTPPが頓挫の危機に瀕していることで高笑いするべきではない。その理由として、まず米国の政治情勢は常に変化していることが挙げられる。オバマ大統領にはまだTPPを救うチャンスも残されており、予想に反してTPPが承認される可能性は否定できないからだ。次に、一部の中国人は米国が経済上および政治上の孤立主義を示すことは、中国にとってのチャンスだと考えているが、これはむしろ中国にとって試練となるかもしれない。

 例えば、もしトランプ氏が政権をとるとすれば、米国は速やかにアジア地区の秩序を維持するというこれまでの役割を放棄するかもしれない。しかし、米国が去った後の空白状態を埋め合わせられるほどの国力を、中国が持ち合わせていないという状況下では、中国にとって非常に険しい外交局面が待ち受けているだろう。中国と米国との間は、ゼロサムゲームではない。それゆえ、TPPの現状を笑うべきではない。

 TPPの話から分かるとおり、現状を越えた速やかな経済の一体化は成功するとは限らない。反エリート、反体制、反融合のトレンドが見られる今の世界ではなおさらだ。とはいえ、世界に災いが及べば中国も被害は免れられない。新たな逆グローバル化の波は中国にとって何を意味するのか? 中国はその点を深く、かつ冷静に考えなければならない。