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「国会議員たちへ、懸命に働いている家庭のために立ち上がれと要求する。われわれは、米国の労働者を裏切って破滅的な貿易協定に賛成する議員を忘れない」
バラク・オバマ米大統領にTPP(環太平洋経済連携協定)などの貿易交渉の権限を与える通商一括交渉権(TPA)の審議に議会が入ると発表された4月15日、米労働組合の全米食品商業労働組合(UFCW)は、そういった過激な反対声明を発表した。UFCWを含む全米最大の組合、米労働総同盟産別会議(AFL・CIO。組合員総数1300万人)も、「TPPは生活水準を押し下げ、賃金を低下させ、失業を増加させる激しいインパクトを持つ」といって、反対広告を展開中だ。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐる米国の外交上の“敗北”も影響して、TPPは実現しなければと、オバマ大統領と議会の指導者たちは焦っている。
それが暗礁に乗り上げたら、環太平洋での米国の影響力は一段と低下する恐れがある。オバマ大統領は「中国のような国ではなく、われわれが貿易のルールを書き換えなければならない」とアピールしている。しかし、前述のように、身内であるはずの組合から激しい反対が湧き起こっている。
本誌が発売されているころにはTPAの採決結果が出ている可能性があるが、過去の例では、TPAを得た大統領が他国との間で決めた貿易合意が、議会で否決されたことはない。だが、今回は組合の反対が激烈であるため、先行きは予断を許さない。
米国内におけるTPP反対派の論点は主に次の三つである。