それだけで本当に日本に在住する外国人の高度人材の数が増えていくでしょうか。私は無理だと考えています。というのは、世界の現実は外国人の高度人材の奪い合いとなっており、多くの国が優秀な外国人の移民の増大に向けて様々な優遇措置を講じているからです。

高度外国人材の移住増加に向けた
米国の新たな一手

 それを象徴するのが、先週明らかになった米国政府の動きです。もともとオバマ政権は5年以上前から、優秀な外国人起業家の米国への移住を促進すべく“スタートアップ・ビザ”を創設しようとしてきましたが、労働組合などの意向を受けた議会の執拗な反対により幾度となく頓挫してきました。

 そこでオバマ政権は議会の承認が不要な行政命令を活用することとし、過去3年以内に米国内で起業し、その企業の株式の多くを所有し、かつその企業のビジネスで中心的な役割を果たしている外国人起業家に対して、当局の判断で5年までの米国滞在を認めることができるようにする方針を固めました。この方針はパブリックコメントに付された後、来年から実施される予定であり、年間3000人くらいの外国人起業家がその対象になるようです。

 既にこれまで、外国人の高度人材の移民を増やすべく、シンガポール、オーストラリア、カナダなどの国が様々な優遇策を講じていますが、いよいよ米国も外国人の高度人材の奪い合いの戦線に参加するのです。

 米国というと、トランプが移民排斥的な主張を行っていることばかりがクローズアップされがちですが、現実の政権はこのように戦略的に外国人の高度人材の受け入れを増やそうとしているのです。その理由は簡単で、外国人の高度人材、特に起業家は新たなビジネス・産業を創出し、低迷する米国経済の生産性を高める起爆剤となり得るとともに、米国内での雇用創出の源ともなるからです。実際、米国では企業価値が10億ドル以上のスタートアップ企業の半数以上で、起業メンバーに最低一人の外国人が入っているそうです。