いよいよアメリカの大統領選挙が近づいてきた。トランプとヒラリー・クリントンはお互いどのようなメッセージを大衆に発信し、どのように選挙戦を渡り合ってきたのか?
11月2日に満を持して開催する「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座 “100%一発説得”最高のプレゼン術×最強のコピー術」に登壇する、ベストセラー『社内プレゼンの資料作成術』著者の前田鎌利氏と、神田昌典氏から「今後100年歴史に刻まれる名著」と評された『最強のコピーライティングバイブル』著者の横田伊佐男氏が語り尽くす。(構成:前田浩弥)

「キャッチコピーの4大法則」
を押さえたトランプ

――11月8日に予定されているアメリカ大統領選挙。クリントン氏優位と言われていますが、トランプ氏も大きな存在感を示していますね。ここまでの選挙戦を「コピーライティング」「プレゼン」の両面から、お2人で振り返っていただけないでしょうか。

横田 伊佐男(Isao Yokota)
CRMダイレクト株式会社代表取締役。東京都生まれ。横浜国立大学大学院博士課程前期経営学(MBA)修了。シティグループ、ベネッセグループにて、一貫してマーケティングに従事。約6000商品のプロモーション経験、大手企業100社超のコンサルティング経験を体系化し、2008年に独立。「使えなきゃ意味がない」を信条に、使えて成果につながる戦略立案を徹底的にたたき込む日本唯一のプロフェッショナル・マーケティングコーチ。企業や受講者の課題点をすばやく摘出し、短時間で確実な成果へと引き上げる「超訳力」を駆使したマーケティング研修講座は、上場企業ホールディングス、政府系金融機関、欧州トップの外資系金融企業、意欲ある中小企業経営者等からの依頼が絶えず、これまでの受講者はのべ2万人を数える。ダイレクトマーケティングフェア、CRMカンファレンスなど講演多数。著書に、『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社)、『一流の人はなぜ、A3ノートを使うのか?』(学研パブリッシング)、『ケースブック 価値共創とマーケティング論』(分担執筆、同文舘出版)がある。2016年10月から横浜国立大学非常勤講師(国際マーケティング論)。横浜国立大学成長戦略研究センター研究員。

 横田伊佐男さん(以下、横田) まぁ、まだどうなるかまったくわかりませんが……(笑)。これまでを振り返るという限定をつけたうえで言うと、トランプはもともと「にぎやかし」のような、ダークホース的な見方をされている候補だったのに、あれよあれよと大衆を巻き込んで勢いに乗り、大統領の有力候補になった。
 そして、クリントンを脅かす存在にまでなった。ここまで登ってこられたのは、彼とその側近のコピーライティング力に大きな要因があると考えています。

――どういうことでしょうか?

横田 トランプ陣営が発信してきた言葉が非常に強いんですよね。
 ところが、ヒラリーの言葉はどうもブレているように感じられ、ちょっと弱い。
 少し分析してみましょう。
 11月2日に開催する「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」で詳しくご説明するのですが、私は、「刺さるキャッチコピー」には4つの法則があると考えています。

★キャッチコピーの4大法則★
法則1:得になる ⇒「お得感」はあるか?
法則2:新情報 ⇒「新しさ感」はあるか?
法則3:好奇心 ⇒「珍しさ感」はあるか?
法則4:簡単な方法 ⇒「お手軽感」はあるか?

 これを踏まえて、両陣営のキャッチコピーを比べてみましょう。
 トランプは「Make America Great Again(偉大なアメリカよ、再び)」。
 このフレーズには、近年、国力を低下させているアメリカのパワーを、もう一度取り戻すのだというメッセージが端的に表されています。
 とくに「Again」という単語が「昔は強かったけど、今はその強さを失っている。もう一度強さを取り戻すのだ」とあおる効果を担っていて、「法則3:好奇心」をそそります。
 また、そもそもアメリカ人は「強いものへのあこがれ」が大きい人たちです。大きい、強い、一番、そういうものを好みます。
 だから「Great」という単語も大好きなんですね。
 この語感が、とくに格差社会の貧困層を中心に、「自分たちが弱くなっている」「強くなりたい」という不満をもつ人たちに響いていると考えられます。
「法則1:得になる」に合致しているんですね。
 また、キャッチコピーは4語でとてもシンプルなので、「法則4:簡単な方法」も訴求できています。