またも衝撃的な事件が起きた。

 毎日新聞11月13日付夕刊によると、秋田市に住む50歳の長男が12日午後、自宅で、78歳の父親に金属バットで殴り殺されたのだ。

 長男は、大学を卒業した頃から家に「引きこもり」状態だったという。報道の通りなら、少なくとも彼は25年以上もの長い間、引きこもっていたことになる。「家の恥」と思うあまり、社会から孤立していった家族の長期化、高年齢化の末路を見る思いがする。

 この事件の背景については、後日改めて、取材報告したい。

内閣府推計の“予備軍155万人”に
疑問を投げかけた厚労省研究班

 さて、折しも、引きこもり家族会の全国組織であるNPO法人「全国引きこもりKHJ親の会(家族会連合会)」の全国大会が、11月13、14日の両日、日本教育会館で行われた。

「発達障害や不安障害などの(引きこもりの)方々の追跡調査によると、大変重度な精神障害に移行してしまっている。これは単なる親の甘やかし、子の甘ったれ、時代観だけではないものが、時間の経過とともに強く惹起してしまっている。家族や当事者は、世間体を脇に置き、腹をくくって、他者に相談や支援を求めていくべきだ」

 自らも当事者の父親である同会の奥山雅久理事長は、こう切実に訴えた。

 印象的だったのは、厚労省研究班班長として「引きこもり」新ガイドラインを作成した国立国際医療センター国府台病院診療部長の齊藤万比古(かずひこ)氏の基調講演だ。

 新ガイドラインは、引きこもりの定義について、≪様々な要因の結果、社会的参加を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって、家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象≫と記しているが、齊藤氏は「他者と交わらなければ、夜中にコンビニへ行って、立ち読みして帰ってくるのは、引きこもりの中の行動と考えてもいい」と解説。

「引きこもりは、統合失調症によって家にとどまっている状態を除外して定義しているが、診断するときまでは、除外されているのかどうかわからないことを常に意識しながら支援しなければならない」と強調している。

 また、何度も紹介しているように、内閣府は今年7月、引きこもり70万人、予備軍155万人と推計した。この内閣府のデータに対し、厚労省研究班の齊藤氏が「少し疑問に思う」と、控え目なトーンで異論を唱えたのは興味深い。