楽天株式会社がこの10月に「楽天24」というサービスを始めた。楽天市場に出店している複数の店舗の商品をサイトにまとめて陳列し、購入者には一括配送するというもの。別々に決済し、異なる日時に受け取るという面倒がないのはうれしい。

 また、各店舗から人気商品や定番がセレクトされているのもポイントだ。たとえば、人気ブランドのミネラルウォーター500ミリリットルが24本で980円と、価格面でも健闘している。

 このサービスは、食品、雑貨、化粧品、そして家電消耗品など、日常生活で使う多くの商品を網羅している。郊外の大型スーパーマーケットで買い物をするようなもので、ネットスーパーに近いサービスと言えるだろう。楽天自身が、すでにネットスーパーをオープンしているのだが、「楽天24」のほうが品揃えが豊富という印象だ(ただし生鮮食料品は扱っていない)。

 現在では、生協を含めて大手のスーパーのほとんどが、この事業に進出している。商品配達時にペットボトルなど資源ゴミを回収したり、無添加、無農薬の食品に重点を置くなど、各店とも差別化の試みに余念がない。実際のところ利益は少ないというが、出遅れるわけにもいかないというところだろう。

「雨の日の買い物が面倒」「買い貯めすると荷物が重い」といった理由で、当然ながらネットスーパーの顧客は主婦層が中心である。少しでも時間を節約したいビジネスパーソンも、利用しているだろう。だが、もっと切実な理由からこうしたサービスを必要としている層がある。「買い物弱者」と呼ばれる人々だ。

 交通が不便な地域で、過疎化・高齢化が進行し、商店も少ないというケースは全国に見られる。都市部でも商店街が崩壊した地域に住む高齢者は、遠出して大型店まで出向かなければならない。

 このような買い物弱者こそ、ネットスーパーの顧客になってもよさそうなものだ。だが、高齢者にはネットを全く利用しない人も多い。山間部などは、ネットスーパーにカバーされていない場合もある。いくら便利なサービスでも、知らない、使えないでは意味がない。

 一部では、買い物弱者への対策もスタートしている。地方自治体と地元商店街やスーパーが協力し、高齢者向けの電子商店街を立ち上げるケースが目立ってきている。高齢者宅を定期的に訪れ、品物を届け、会話するというスタイルは限りなく福祉サービスに近い。

 高齢化が進むと、宅配ニーズ、福祉ニーズが高まるのは自然なことだ。経済産業省の調査によると、買い物弱者は全国で600万人はいるとのこと。これは一大マーケットである。

 とはいえ、ニーズはあっても「商売」になりにくいのが宅配や福祉サービスだ。しかし地元密着型のネットスーパーなどでは、地域の福祉に貢献すること自体が企業イメージの向上や顧客の確保につながるケースも多いだろう。現時点では黒字店が少ないといわれるネットスーパーだが、伸びしろはまだまだあるのだ。

(工藤 渉)