チャレンジ精神を失った企業の
行く先は見えている

――日本企業がIoTでイノベーションを起こすにはどんな課題がありますか。

 技術だけでなく、マーケットでイニシアティブをとることも重要。それには、既得権にしがみつくのではなく、チャレンジ精神が求められます。

 例えば、ロボット掃除機の代名詞にもなった、あの大ヒット商品がありますよね。実は、日本の家電メーカーではその製品が登場するかなり前から製品化できる段階になっていたそうですが、会議で「もし仏壇にぶつかってロウソクを倒し、火事になったら誰が責任をとるのか」という話が出て結局、中止になったそうです。その後、海外のベンチャーが売り出して、日本企業は後追いする形になっています。

 何が言いたいかというと、日本の企業組織はリスクに対してやや過剰に反応し、自主規制に走ってしまう傾向があるということです。チャレンジ精神を失った企業はいずれ競争力を失うでしょう。その結果、組織が破綻したり倒産しても仕方がない。ただ、そこで働いていた多くの社員は救わなければいけない。

 何万人、何十万人という人が路頭に迷ったら、日本経済に与える影響は計り知れません。そういう発想をみんなが持つようにならないと、日本の再生はないでしょう。日本経済が効率よく新陳代謝していかないからです。

 米国では、かつて一時期、コンピュータ業界をリードしたバロースやタンデムコンピューター、DECなども今は倒産したり買収されたりして姿を消しています。それでも優れたテクノロジーは引き継がれ、次々にベンチャーが起業し、経済は活性化しています。

 もっと規制緩和を行い、日本をイノベーションが起こりやすい国に変えていくことも必要です。しかし、何かをやろうとすると、日本では既得権や制度の壁が立ちはだかる。私は国家戦略特区諮問会議の民間議員でもあるので、その打開策の1つとして「分野特区」の実施を提案しています。これまでの地域特区ではなく、「iPS研究特区」「IoTを利用した先端農業特区」といったようにテーマで区切る。こうすれば、一つずつ成功例が積み重ねられ、徐々にではあっても日本は確実に変わっていくでしょう。